移乗動作の基礎となる”立ち上がり動作”を楽に介助するためのコツ

移乗動作の基礎となる”立ち上がり動作”を楽に介助するためのコツ
  • 「どうやったら腰を痛めずに介助できますか?」
  • 「なかなかお尻が上がらないんです・・」

ベッドから車いすの移乗動作は介助をする人にかかる負担が大きい介護動作です。世の中にはたくさん介助技術が溢れていますが、全ての人に同様のことは実践できません。

まずは、立ち上がり動作の基本を学び、それを移乗動作に応用することで力を使わない介護を行いましょう。

立ち上がり動作の介助は「座った姿勢」が大事

①猫背
①猫背の姿勢
②足が伸びた状態
②足が伸びた状態
③一般的ないい姿勢
③一般的ないい姿勢

この写真を見てあなたはどう思いますか?

移乗動作が行いやすい姿勢は③、移乗動作が行いにくい姿勢は①②。直感的に判断できる人は多いと思います。

しかし、なぜ③が移乗しやすいと思うのか?この理由を簡潔に説明することは意外と難しいものです。

立ち上がり動作に必要な要素

立ち上がるために必要な動作は以下の4つです。

  1. 身体を前に倒す(しっかりお辞儀する)
  2. お尻が座面から離れる
  3. 膝や身体を伸ばす
  4. 立った姿勢になる

順に説明していきます。

身体を前に倒す

身体を前に倒す
身体を前に倒す

ベッドに座った状態から立ち上がるには重心を前に移動させる必要があります。立った時、人の重心はおおよそ骨盤のあたりにあります。

しかし、「猫背で座った姿勢」は骨盤が後ろに寝ている状態です。重心も後ろに移動しているため、立ち上がり動作をする時により深く身体を倒す必要があります。

しっかりとお辞儀することで体重を前に移し、立ち上がるための準備動作を行います。

お尻が地面から離れる

お尻が地面から離れる
お尻が地面から離れる

お尻が座面から離れる時、どのように介助をしてますか?ここで力に頼ってしまうと肩や腰を痛めてしまいます。

お尻が座面から離れる時の特徴として、

  1. 「頭」が足より前に出る
  2. 「おへそ」が足から前に出る
  3. 「膝」が足より前に出る

「頭」「おへそ」「膝」の位置を意識して職場の同僚やご家族で試してみてください。この3つのポイントを抑えることで簡単にお尻を上げることができます。

力を使わない介護の実践例

まず、座位姿勢を整えます。

膝が伸びた介助しにくい姿勢
膝が伸びた介助しにくい姿勢
膝を曲げる
膝を曲げる(痛みがでない程度)
膝の後ろに足を置く
膝の後ろに足があるとより楽に立ち上がることができます。
腰をできるだけ起こす
できるだけ、腰を起こした状態(可能であれば)

座位姿勢を整えることは必須です。

  • 「前を見てください」
  • 「背筋を伸ばしてください」

といった声掛けをすることも重要です。

また、介助される人に協力が得られにくい場合でも、足の位置を整えるだけで介助が楽になります。

介助をする人の腰の位置に注目
介助をする人の腰の位置に注目
介助される側より腰を低く
介助される側より腰が低くなるように(座面の高さ調整をするとより楽)

自分の腰の位置が低くなると、相手のお尻が上がりやすくなります。

悪い例

悪い例1
悪い例: 腰の位置が高いと…
悪い例2
悪い例: 起き上がりにくくなります

まとめ

立ち上がり動作に必要な要素を解説しました。

  1. 「座位姿勢を整える」
  2. 「重心を前側に移動させる」

この2つのポイントを押さえることで『介助をする人』も『介助をされる人』も楽になります。普段の介助場面でちょっと意識してみてください。