皆さんは普段の生活の中で、認知症の方と接する機会はありますか?
わが国は世界一の長寿国であり、認知症と共に生きる高齢者の人口は、今後も増加傾向にあります。
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は「約6人に1人」になると言われています。
つまり、認知症は身近な存在になってきているのです。
これからは、全ての人が認知症に対して正しい知識と理解を持ち、認知症と共に暮らせる社会をつくることが必要です。そこで注目されているのが「認知症サポーター」。今回は認知症サポーターについて、詳しく解説していきます。
認知症サポーターとは?
認知症サポーターとは、地域で暮らす認知症の人やそのご家族を、できる範囲で手助けする人のことをいいます。
地域で定期的に開催されている認知症サポーター養成講座を受ければ、誰でも認知サポーターになることができます。
2021年現在、日本では約1300万人の認知症サポーターが活躍しています。
認知症サポーター制度はなぜできたの?
しかし、なぜ「介護職員」によるサービスではなく、「認知症サポーター」という制度なのでしょうか?その背景をご紹介します。
認知症の方を地域全体で支えるための取り組み
少子高齢化が進む日本は、介護人材不足が深刻な状況です。在宅介護においても、1人の高齢者に対して支える子供世代の負担は増大しています。
国が認知症サポーターの養成に力をいれている背景は、以下の通りです。
- 認知症高齢者の増加
- 介護する家族の負担の増大
- 医療・介護専門職の人材不足
増加し続ける認知症高齢者を、ご家族や介護従事者だけでサポートするのは、現実的に困難であり、地域全体で支えていく必要があるのです。
そこで厚生労働省が2005年に「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」を開始しました。
社会全体で認知症の方が安心して暮らしていける街づくりを目指すには、「より多くの人々が認知症が正しく理解する必要がある」と考えたのです。そして、その一環として「認知症サポーター」の養成が始まりました。
認知症サポーターはこんな人におすすめ!
認知症について学びたい、支えたいという気持ちがあれば、誰でも認知症サポーターとして活躍することができます。
- 認知症に対する理解を深めたい人
- 身近な人が認知症を患っている
- 仕事で高齢者の方と関わる機会が多い人
- 地域に役立つ活動がしたい人
- 将来親の介護を考えるきっかけとして、認知症について学びたい人
当てはまる人は、ぜひ認知症サポーターの講習を受けてみましょう。
認知症サポーターの活動
認知症サポーターの主な活動は、地域のニーズに合わせた以下の4つです。
- 地域に住んでいる認知症高齢者の見守り
- 気になる人がいればさりげなく見守る
- 困っている高齢者がいれば、声をかけたり話をきいたりする
- 認知症の当事者やその家族が交流できる場所づくりの企画や交流会へ参加
ご近所さんや親族、友人が認知症になったとしても、変わらずに付き合いを続けていくことも、認知症について学んだサポーターだからこそできる大切な活動なのです。
認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない
まずは、認知症の症状について正しく理解を深めることが大切です。
認知症は誰しもがなる可能性のある病気です。
残念ですが、まだまだ認知症に対して十分に理解されているとは言えません。
認知症になったらもう終わり、情けないと感じて悲観される方がたくさんいるのも事実です。
そういった漠然とした不安は、認知症についての正しい知識がないから生まれてくる感情でもあります。
認知症になっても、周囲の理解や接し方で穏やかに過ごすことができます。
認知症について学び理解を深めることは、自分の周囲の人や、自分自身を助けることになるのです。
認知症の人や家族に対して温かい目で見守る
認知症になると、物忘れがあったり物事の手順を忘れてしまったりします。
こういったことが積み重なると、外に出ることすら自信をなくしてしまい、自宅に引きこもりがちになってしまう方がいます。
介護をする家族も周囲の目が気になり、外出を避けるようになってしまうとますます孤立が進んでしまいます。
より多くの人が認知症について知り、温かく見守ることができれば、本人や家族も不安が和らぎ孤独感も軽減されるでしょう。
近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する
認知症サポーターになったからといって、難しく考えることはありません。
まずは、自分なりにできる簡単なことからはじめてみましょう。
町で困っている方がいれば声をかける、さりげなく見守るといったように、少し意識を変えるだけでいいのです。
最近は、IT化や自動化が進んできたこともあり、ネット予約や自動精算機などの操作に戸惑っている高齢者の方を見かけます。
操作を手伝ったり、イライラせずに気長に見守ったりすることも簡単にできる支援です。
ひとり歩きをしてしまう認知症の方などは、見守りの目が増えることで、事故などを防ぐことができます。
よく会う人の体調や行動を気にかけてあげることも大切な支援です。
このような活動は、些細なことかもしれません。
ですが、より多くの人が意識して行動することで、認知症の方を支える大きな力になるでしょう。
地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる
認知症サポーターの養成講座では、認知症に関する相談先や認知症関連事業についての紹介をされます。
ご本人やご家族の困りごとが大きいと感じたら、そういった関係機関につなげることも、認知症サポーターの大切な役割です。
まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する
最近は、バリアフリー化が進み、ユニバーサルデザインのトイレや施設が増えてきました。
バリアフリーの施設は、障がいの有無に関係なく使用することができます。
ですが、本当のバリアフリーとは、「人の心」ではないでしょうか。
1人では超えられないような大きな段差があっても、そこに居合わせた人がみんな手を差し伸べてくれたなら、大きな障害にはなりません。
認知症の方が過ごしやすい社会とは、心身に不自由のある方、子供や子育て世代、外国の方にとっても優しい社会といえます。
認知症サポーターになることは、あらゆる人が生きやすい社会を共に作ることができる活動でもあるのです。
認知症サポーター養成講座を受講するには?
認知症サポーター養成講座は、自治体(市町村・都道府県)または企業・職域団体(従業員を対象とする)で実施されています。
約90分の講座を受けることで、誰でも認知症サポーターになることができます。
サポーター養成講座は、キャラバン・メイトと呼ばれる講師によって行われます。
認知症サポーター養成講座の受講を希望される方は、市町村のホームページや広報誌をチェックしてみましょう。
まとめ
今回は認知症サポーターについて紹介しました。
全国各地で開催されている認知症サポーター養成講座を受講すれば、誰でも認知症サポーターとして活躍することができます。
もし、身近に認知症の方がいるなら、ぜひ認知症サポーター養成講座を受講してみてください。
あなたの優しい気持ちが誰かの支えになります。