もし自分の人生が最期の時になったなら…。
皆さんはその時のことについてどのように考えていますか?家族や近しい人達と具体的に話し合ったことがあるという人は少ないはずです。
しかし、「縁起でもない」「まだまだ先の話」…と話題を避けずに、一度しっかりと向き合ってみて欲しいのです。
なぜなら、人生会議を行うことで「これからをどう生きるか?」を考えるきっかけになるからです。
そこで、今回は人生会議 = アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について解説します。
「人生会議」アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて計画を立てることを言います。
患者さんを主体に、その家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援していきます。
一人ひとりが抱いている人生観や価値観、希望などをより明確にして、将来の医療及びケアに活かしていくことを目標にしています。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は医療従事者の間では知られていましたが、一般の方にはあまり浸透していませんでした。
そこで平成30年になってから、より多くの人に知ってもらえるように「人生会議」という親しみやすい名称がつけられたのです。
日本は死についての話題に対して「縁起でもない」と言って、タブー視する風潮があります。
しかし、時代の変化と共に自分らしく最期を迎えたいと思う人は多くなっています。
最近では「終活」という名称で、自分の最期について考える人が増えてきているのも事実です。
なぜ人生会議が必要なの?
では、なぜ人生会議が必要なのでしょうか?
誰でもいつでも病気やケガをする可能性がある
現代は「人生100年時代」と呼ばれるようになり、平均寿命が伸びてきています。最後の時を考えるのは高齢になってからの話で、まだまだ先のことだと思うかもしれません。
しかし、病気やケガで自分や家族の命がいつ危険に晒されるかはわかりません。
もしも、自分の意思が伝えられないような状況になってしまったらどうでしょうか?
命が危険な状態になると、約70%の人が将来的な医療やケアについて自分の希望を伝えられなくなると言われています。
自分も後悔することになりますし、残された家族も本当に本人が望んでいることなのかを常に迷いながら、様々なことを決めていかなくてはならないのです。
人生会議をして、自分の意思を周囲に伝えておけば、あなたの心の声を周囲の人に知らせることができます。
つまりは、あなたが大切に思う人達の「心の負担を軽くする」ことになるのです。
将来的な医療やケア内容について、元気なうちから信頼できる人たちと話し合っておくことは、非常に重要な意味をもつことになります。
人生会議をすることでこれからを考えるきっかけになる
人生会議が話題となると「人生の最終段階、死が近い」というネガティブなイメージが独り歩きしてしまうことがあります。
人生会議は、健康状態に問題なく生活している人から、人生の最終段階にある人まで、すべての人が対象になります。
したがって、「どう生き、どう逝きたいのか?」を考えることは、
- どう生きたいか?(人生をよりよく生きるにはどうすればいいのか?)
- どう逝きたいのか?(人生をよりよく終えるにはどうすればいいのか?)
という両方の側面を自分自身に問うことになります。
人生会議で自分の価値観や気持ちを振り返ることは、自分との対話を繰り返すことであり、自分自身がどう生きたいかを考えるきっかけになるのです。
人生会議の進め方とは?
人生会議を行う上でのポイントを4つご紹介します。
人生会議で大切な4つのポイント
- 自分が大切にしていること、価値観について考える
- 自分の信頼できる人を選ぶ
- 信頼できる人たちや医療・ケアに関わる人達に伝える
- 話し合った結果を大切な人や信頼できる人と共有する
基本的には、1→2→3→4と進めていきます。しかし、心身の状態により意思や考えは常に変化していくものです。
時間が経過したあとで「あの時は〇〇と考えていたけど、やっぱり△△にしよう」というように変更しても全く問題ありません。
繰り返し話し合っていくことが大切なのです。
具体的に話し合っておきたい内容や注意点について
人生会議に決まった議題はありません。
人生会議の目的は、自分の人生をどう生きるかということを考え、より人生を豊かにすることなのです。
まずは、あなたの価値観について共有していきましょう。
「大切にしたいこと」や「して欲しくないこと」はなんでしょうか?
最初から難しく考える必要はありません。
好きな音楽・好きな食べ物など、簡単なものからリストアップしていくのもよいでしょう。
考えや思いをノートに書きとめたり、家族にはなしてみたりしましょう。
自分でも気づかなかった気持ちに、気づかされることもあるかもしれません。
また、以下のようなことについて、自分の気持ちを周りの人たちと共有しておくことも大切です。
話し合っておくとよい内容の一例
- 家族や友人のそばにいること
- 仕事や社会的な役割が続けられること
- 身の周りのことが自分でできること
- できる限りの医療が受けられること
- 家族の負担にならないこと
- 少しでも長く生きること
- 好きなことができること
- ひとりの時間が保てること
- 自分が経済的に困らないこと
- 家族が経済的に困らないこと
- 痛みや苦しみがないこと
人生会議に役立つツールを紹介
具体的にどのようなことを考えればよいのかわからない場合のために、専用のツールを使って考えをまとめてみるとよいでしょう。
自分の思いを1冊にまとめる!エンディングノートの活用
あなたに関するさまざまな情報をわかりやすくまとめておくためのノートです。記入しやすい専用のノートを利用することもできますが、普通のノートでも構いません。
また、万が一に備えて、家族や友人に伝えておきたいことや自分の希望などを書き留めておけるので、エンディングノートとしてだけでなく、災害や盗難などで大切なものを紛失してしまった時にも役に立ちます。
- 銀行口座
- 保険
- クレジットカード
- 口座引落し
- 重要な連絡先
- ペット
- 医療 介護
- 葬儀 お墓
- 相続
ただし、遺言書としては認められません。何度でも書き直すことができるので、その分、気軽に書いてみましょう。
ゲーム感覚で気軽に話せる「もしバナカード」
ゲーム感覚で気軽に話し合うことができる「もしバナカード」というものがあります。
1セットには36枚のカードが入っており、1枚ごとに重病のときや死の間際によく話題に上がる大事なことが書いてあります。
たとえば、
- どのようにケアして欲しいか
- 誰にそばにいて欲しいか
- 自分にとって何が大事か
といった内容です。
家族で一緒にやると良いコミュニケーションにもなりますし、介護施設やデイサービスでのレクリエーションとして活用されています。
厚生省などのサイトからダウンロードできるシートを活用
厚生労働省のサイトや各市町村がホームページ上で、人生会議に役立つシートを無料で公開しています。
これらのツールを活用して、これからの人生を考えるきっかけにしてみてください。
まとめ
今回は、「人生会議」アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について解説しました。
年齢に関係なく、誰でも病気やケガにより意思表示ができなくなる可能性があります。人生会議は、人生の最期を考えることだけではありません。
自分の人生を振り返り「どう生きるか?」を考えるきっかけになるのです。難しく考える必要はありません。
まずは、今回紹介したノートやダウンロードできるシートを利用して、自分の価値観や考えについてまとめてみましょう。