人は動物と触れ合うことによって、心身ともに良い効果を得ることができます。そんな中、高齢者が動物(ペット)と暮らすことは、精神面・肉体面・認知症予防などに対して良い効果があるといわれています。
しかし、その一方で高齢者自身の体力や健康面などの問題から、ペットの飼育を継続することが困難になるケースも増えています。
そこで今回は、高齢者がペットとの暮らしで得られるメリットとデメリット、注意点やペットを飼う前に考えておくべきポイントついて紹介していきます。?
ペットと一緒に暮らすことで得られるメリットとは?
ペットと暮らすとどんなメリットがあるのでしょうか?4つご紹介します。
癒し効果がある
国立環境研究所と東京都健康長寿医療センターによると、日本の高齢者1万人以上を対象にした調査結果から「犬を飼っている人は、飼ったことがない人に比べて介護が必要になったり、亡くなったりするリスクが半減することがわかった」
と報告しました。
海外でも様々な研究がされており、ペットを飼うことで以下のような効果があったと報告されています。
- ストレスが軽減する
- 血圧やコレステロール値を下げる
- 心疾患になるリスクを軽減する
すなわち、飼い主にとってペットとの生活は、心身に良い影響を与え、安らぎや生きがいを感じることができるのです。
コミュニケーションの機会が増える
筆者も犬を飼っているのですが、犬を連れて散歩をしていると飼い主同士で会話をする機会が増えました。
また、同じ犬種や同じ年頃のペットを飼っている方と出会うと、悩みや共感できるエピソードも多く、あらゆる年代の方と知り合いになることができました。
まさにペットが結んでくれたご縁。ペットを通して人と繋がり、コミユニケーションの機会が増えるのです。
規則正しい生活になる
ペットと暮らすと、当然のことながら「お世話」をする必要があります。食事の準備やグルーミング、遊び相手、入浴、掃除、さらに、種類によっては散歩も必要になってきます。
飼い主がうっかり寝坊をしようものなら、「散歩は?!ご飯は?!遊んで!」と鳴いて催促しにやってくることも。
つまり、ペットと生活することで、自然と生活リズムができてくるのです。
認知機能への刺激になる
繰り返しになりますが、ペットを飼うと毎日お世話が必要です。日々のお世話は認知機能の刺激にも繋がります。
言葉でコミュニケーションの取れない人間と動物にとっては、体調管理は毎日の触れ合いや観察力が必要なのです。目を合わせて話しかけ、鳴き声でどんな感情なのか推測し、体温を感じて、体を撫でる。すると、飼い主自身の五感が刺激されて、認知機能も活発になります。
ペットと高齢者の暮らしで考えられるデメリットとは?
もちろんペットと暮らすとデメリットもあります。一体どんなものがあるのでしょうか。
ペットも飼い主も高齢になったときにお世話が大変
ペットも平均年齢が伸びて、高齢化が進んでいます。動物の種類にもよりますが、例えば犬の平均寿命は約14歳、猫は約15歳といわれています。最近では18歳、19歳まで生きる犬猫も増えてきました。
また、ペットにも認知症があります。ペットの認知症も、人と同様、高齢になるほど発症しやすくなるのです。
また、老化により足腰の筋力が低下して、寝たきりになる可能性もあります。
すると、人間と同じように、ケアや介護が必要になります。
犬や猫を飼いたいのであれば、15年~20年後でもペットのお世話ができる体力、環境が自分にあるか?についてもしっかり考えておかなくてはいけません。
体力もお金も必要
ペットと暮らすには、体力も必要です。
例えば、力のある大型犬や中型犬は散歩をするだけでも一苦労です。実際に、高齢の方が散歩中に犬に引っ張られて転倒し骨折したケースや、鳥かごを外に出そうとして転んだというケースもあります。
では、小さな動物なら問題ない!というわけでありません。たとえ、金魚やハムスターなどの小動物であっても、水槽やケージの掃除など、ある程度の体力が必要なお世話が必要になってきます。
また、体力だけでなく金銭的な問題もあります。ペットを飼育するためには、ある程度費用をかけなければいけません。たとえば、犬や猫であれば体の大きさに比例してご飯をよく食べます。くわえて、アレルギーや病気など、ペットに持病があると特別なフードが必要になり、その分出費も高くなります。
さらには、毎月トリミングが必要な犬種もいます。病気になれば、治療費もかかります。
最近だと、コロナによる失業で金銭的余裕がなくなってしまい、「ペットを手放した」という人も増えてきました。
ペットを飼育する場合は、自分の体力や収入面、生活スタイルをよく考えて、ペットを選ぶことが大切です。
長く幸せに暮らすために!高齢者がペットと暮らすときに考えておくこと
ペットと暮らすための注意点についてお伝えします。
何かあった時のために預け先を見つけておく
急に外出が必要になったり、飼い主が体調を崩して入院したりと、ペットのお世話が出来なくなることも考えられます。
もし、一定期間お世話ができない状況になった時のために、家族・友人・近所の人など、預かってくれる人を探しておきましょう。
よく顔を会わせる人ならペットも安心です。
相談しやすいかかりつけの動物病院をみつけておく
かかりつけの動物病院は、通いやすい場所がおすすめです。
健康診断や予防接種を通して、獣医の先生とコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておきましょう。
動物病院によっては、ペットホテルが併設してある病院もあります。
定期的に利用して、ペットを慣らしておけば、いざという時も安心して預けることができます。
ペットを清潔にして病気を予防をする
定期的にシャンプーをしたり、トリミングサロンにつれていったりしてペットを清潔にしておきましょう。
また、ワクチン接種やノミ・ダニの予防薬を内服させておくことも大切です。
また、もしも自分の周りで、高齢の方が飼っているペットに以下のような変化がないか注意して観察しておくことも大切です。
- 「今まできれいにされていたのに、最近不潔になってきている」
- 「最近、散歩しているところを見かけないな…」
そういった場合は、飼い主さんに心身の健康状態に問題があり、お世話ができない状況かもしれません。
周りの人が、そういった変化に気づいたときは、飼い主さんのご家族や保健所に相談してみましょう。
基本的なしつけをしておく
トイレのしつけやケージの中でおとなしくできるように、基本的なしつけをしておきましょう。 万が一の災害でペットを連れて避難したときにも必要なことです。
飼い主もペットも感染症や病気の予防を心がける
ペットの健康だけでなく、飼い主である人間も普段から病気の予防を心がけておきましょう。
定期的に健康診断をうけて、持病がある場合は検査や治療をしましょう。
日常生活に支障が出ないように、きちんと体調管理をして、飼い主もペットも元気に暮らせるように心がけることが大切です。
まとめ
今回は、ペットと高齢者が一緒に暮らすことで得られるメリット・デメリットと注意点についてお伝えしました。
ペットと暮らすことで、コミュニケーションの機会が増え、認知機能にも良い刺激になります。
また、お世話や散歩を通して規則正しい生活を送ることもできます。
ただし、ペットも命ある生き物です。最期まで責任をもってお世話をする必要があります。
ペットが高齢になった時はどうするか?飼い主自身の生活や将来もしっかりと見据えておかなければいけません。「かわいいから」と勢いだけでペットを飼うのではなく、自分自身の体力や金銭面、サポートしてくれる家族や預け先についてもしっかりと考えておきましょう。
ペット達は、生涯をともに過ごすパートナーです。ペット達につらい思いをさせないように、事前に準備や情報収集をしてから、お迎えすることが大切です。