『買い物リハビリ』というリハビリ方法をご存知でしょうか?
買い物リハビリとは、その名の通り「買い物を通して介護予防を図るリハビリサービス」のことです。
今回の記事では、買い物リハビリが注目され始めた理由をはじめ、認知機能や身体機能への影響や買い物リハビリサービスを導入している事業者・自治体などをご紹介します。
買い物リハビリが注目されている理由
買い物は、日常生活を行う上で必要度の高い動作のひとつであり、「動作を促す」を目的としてリハビリに適しています。
また、買い物に行くことで認知機能が活発に働き、お店までの移動や店内での移動は運動にも繋がります。
このことから、普段何気なく行っていることが、実は良いリハビリになるかも?!と注目されているのが、買い物リハビリなのです。
利用者様が認知症や車椅子での手助けが必要な場合は、利用者の能力に合わせてスタッフが付き添いサポートをします。
買い物に行けない理由は個人で異なる
「買い物に行けない人」には、それぞれ異なる理由があります。
例えば、「足腰が悪く、長く歩くことが難しいためお店に行くことができない人」や「認知症で買い物のトラブルが増えてしまい家族に止められている」という人もいるでしょう。
買い物リハビリは、買い物ができないから代行してもらうのではなく、どの部分に問題があって出来ないのかを明確にして、支援することです。
買い物と認知機能・身体機能は大きく関連している
例えば、あなたがスーパーで買い物をしている時は、どんなことを考えているでしょうか?
- 今夜は何を食べよう…
- あの料理を作るなら、これとこれがいる…
- あの食材はもう残り少ない…
など、食べたい物を思い浮かべたり、自宅にある在庫を思い出したり、献立に必要な食材を考えているはずです。
つまり、買い物中は脳を活発に働かせているのです。
また、買い物は脳を使うだけではなく、身体も使います。行きたいお店に出向くために、屋外を移動しなければなりませんし、店内ではカートを押して陳列棚の間を器用に移動しなければなりません。
買い物という行動には認知機能や身体機能が大きく関連しているのです。
買い物に行くための能力とは?
では、買い物に必要な能力とはどのような能力なのでしょうか?
買い物に必要な認知機能と身体機能
認知機能
- 買うべきものを記憶しておく(記憶)
- 買うものの名前がすぐに思い出せる(語想起)
- 買うものを説明したり、場所を尋ねるたりする(言語能力)
- 予算に合わせて購入する(計算)
これらの機能が低下してしまうと、買い忘れが多くなったり、重複買いや不要な物を購入したりするなどのトラブルが多くなってしまいます。
身体機能
- お店まで移動する身体機能(歩行能力・公共交通機関の利用)
- 店内を移動する下肢の機能(歩く、カートを押す)
- 商品を手に取る、お金を渡す受け取る(上肢や手指の機能)
- 買ったものを自宅まで運ぶ(筋力・持久力)
手足の筋力や歩行能力が低下してしまうと、自らお店に出向いたり、荷物を持てなくなったりしてしまいます。
買い物リハビリのメリットとは?
「買い物」という目的が、選択の機会を作り動作を促す
認知症や病気などで介護状態になると、「自ら選択する機会」が少なくなってしまいます。
実際にスーパーの売り場に行くことは、選択の機会を作ることになります。
そして「あれが欲しい、食べてみたい」という欲求が生まれます。
欲求は、意欲につながり行動を促します。
つまり、身体機能や認知機能によい刺激になるのです。
お金を扱うことで得られる効果
予算の範囲内で買い物をするためには計算しなければなりません。また、硬貨や紙幣を出し入れするときには指先の動きを使います。
これらを自然に行うことができるので、リハビリの効果が期待できます。
コミュニケーションの機会が増える
店員やお客さんとのやりとりや会話を通じて、人や社会とのつながりが生まれます。
コミュニケーションの機会が増えることで、認知症予防にも効果が期待できます。
地域や事業者も注目!買い物リハビリサービスを導入している事業者、自治体の例
実際に買い物リハビリをサービスとして展開している会社や自治体を紹介します。
買い物リハビリの先駆者!専用カートの開発も
買い物リハビリの先駆者として、ショッピングリハビリサービスの事業提供や歩きやすいカートの開発を行った会社です。
- 既存の通所介護事業所などにショッピングリハビリサービスのノウハウを提供
- ショッピングセンターなどの商業施設内に、通所介護事業所を設置
「健康の増進」「地域社会の課題解決」「地域経済の活性化」という3つの目標を掲げて事業を展開している注目の会社です。
介護予防に!総合事業として地元商業店と協力
こちらは、事業所と地元の商業店と協力して行っているサービスです。
対象は、介護保険サービスを利用していない方で、送迎、買い物、健康チェックや体操などを合わせて行っています。
長久手市 地域いきいきライフ推進事業 買い物リハビリテーション
楽しみながらリハビリを!買い物リハビリは楽しみを見つける場所
今回は、今注目されている買い物リハビリをご紹介しました。
お店に出向いたり、カートを押して店内を歩くことで、自然と運動の機会が得られ下肢筋力低下の予防が期待できます。
また、店員と話すことで、コミュニケーションの機会も増えるでしょう。
すなわち、買い物は「楽しみながら脳と体を動かすこと」ができるのです。
介護保険のヘルパーサービスを利用すれば、買い物を頼むこともできますが、自分で商品を選ぶことはできません。
買い物は生活必需品を調達する場所でもありますが、新しい発見や楽しみを見つける場所でもあります。
自分の目で見て選ぶことが、買い物の醍醐味といえます。
実際に買い物リハビリサービスを実施している事業者や市町村があるので、気になる方はお住まいの地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。