サルコペニアを予防!高齢者が知っておきたい栄養と運動のタイミングについて解説

サルコペニアを予防!高齢者が知っておきたい栄養と運動のタイミングについて解説

加齢に伴い筋肉量が減少していく現象「サルコペニア」。サルコペニアは、老化以外にも様々な原因があるとされています。

では、サルコペニアを予防するためには、筋肉量を増やすための運動以外にどのようなことに気をつけなければいけないのでしょうか?

今回はサルコペニアの原因と予防方法についてご紹介します。くわえて、簡単なセルフチェックの方法もご紹介していますので、気になっている方はご一読ください。

高齢者が気をつけたいサルコペニアとは?

高齢者が気をつけたいサルコペニアとは?

サルコペニアとは、加齢や病気などにより全身の筋肉量が減少し、筋力低下や身体機能の障害を伴うものをいいます。ただし、筋肉量が減っているだけではサルコペニアではありません。

サルコペニアは、日常生活の能力が低下し、時には死のリスクも伴います。

原因を理解した上で、サルコペニアを予防することが大切です。

サルコペニアの原因とは?

サルコペニアは、タンパク質の摂取不足と運動量の減少によって、作られる筋肉よりも分解される筋肉の方が多くなることが原因です。

その原因が加齢のみの場合を原発性サルコペニア、その他の原因の場合を二次性サルコペニアと分類しています。

サルコペニアの分類

原発性サルコペニア

  • 加齢によるもの

通常、加齢とともに筋肉を構成する筋線維の数が減少していきます。また、筋線維自体も細くなっていきます。

加齢以外に明らかな原因がないものを原発性サルコペニアといいます。

二次性サルコペニア

  • 活動量の低下
  • 病気に関連するもの
  • 栄養に関連するもの
活動量の低下

活動量の低下によるサルコペニアは、不活動な生活や安静、無重力などが原因で起こります。

長期の入院生活で生じることが多いと言われていますが、施設や在宅生活などの生活期でも不活発な状況や閉じこもりの生活を送っていても、サルコペニアになってしまいます。

病気に関連するもの

予防力の少ない高齢者では、短期間の入院や感染症などで寝込んだだけでも、身体機能が低下する恐れがあります。

また、脳・心臓・肺・その他内臓の病気や炎症性疾患、ガンなどの悪性腫瘍や内分泌疾患など病気になったことが引き金になり、サルコペニアになってしまうこともあります。

栄養に関連するもの

消化管の疾患で栄養吸収に問題が起こったり、薬の副作用などで食欲不振が起こったりすると、エネルギーやタンパク質不足に陥り、サルコペニアを発症してしまいます。

自宅でできるセルフチェック

自宅でできるセルフチェック

サルコペニアは、ふくらはぎの太さを自分の指で測る方法で、簡易的にセルフチェックすることができます。

指輪っかテストとも言われ、体格にある程度比例する手の大きさを利用してチェックします。

ふくらはぎの一番太い部分が、両手の親指と人差し指で作った輪よりも小さく隙間ができれば要注意です。

サルコペニアの評価基準とは?

サルコペニアの診断には、サルコペニアワーキンググループが発表したAsian Working Group for Sarcopenia 2019(AWGS2019)を用いることが推奨されています。

 

本来ならば設備の整った施設や病院で診断を受ける必要がありますが、設備のない病院や地域でもおおよその評価ができるように簡易版の評価基準が出されています。

1.症例の抽出

  • 身体機能低下または制限、意図しない体重減少
  • 抑うつ気分、認知機能障害
  • 繰り返す転倒、栄養障害
  • 慢性疾患(心不全、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病等)
  • 下肢周囲長(ふくらはぎの太さ)が男性34㎝未満 女性33㎝未満
  • SARC-F(サルコペニアスクリーニングツール)にあてはまる

2.身体機能評価

  • 握力   男性28㎏未満 女性18㎏未満
  • 6m歩行速度 1m/秒未満
  • 5回椅子立ち上がりテスト 12秒以下

参考引用:公益財団法人 長寿科学振興財団健康長寿ネット

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/sarcopenia-shindan.html

サルコペニアを予防するには食事と運動が大切!効果を高める方法とは?

サルコペニアを予防するには食事と運動が大切!効果を高める方法とは?

サルコペニアを予防するには栄養と運動を行うことが大切です。

身体には日内リズムがあり、より栄養を吸収しやすいタイミングがあります。

運動の効果が出やすいのは午後から夕方

起床してすぐは、運動にはあまり適していません。前日の夕食からかなりの時間が経過しているため、エネルギーが減少しているからです。

そのため、まずは朝食を十分に摂る必要があります。

身体機能がピークとなるのは午後から夕方です。この時間帯のほうが運動効果が出やすいとされています。

食後1~3時間は運動を控える

食事直後は消化吸収などで内臓の血流量が増えるため、運動には適していません。

食事内容や消化機能に個人差はありますが、食後1~3時間程度は運動を控えた方がよいでしょう。

運動後に糖質とタンパク質を積極的にとろう

運動後に糖質とタンパク質を積極的にとろう

食事時間と運動の関係では、運動後なるべく早くタンパク質と糖質を含んだ食事を摂ることで、筋肉のタンパク質合成が増加するといわれています。

高齢者のタンパク質摂取量としては、健常な高齢者では「1.0〜1.2g/体重(kg)/日×基準体重」、運動をしている高齢者では「1.2g/体重(kg)/日×基準体重」以上とされています。

例えば、基準体重が60kgと仮定した場合に最低限摂取するタンパク質量の目安は以下です。

健常な高齢者:

タンパク質摂取量 = 1.0g/体重(kg)/日 × 60kg = 60g/日

運動をしている高齢者:

タンパク質摂取量 = 1.2g/体重(kg)/日 × 60kg = 72g/日

ただし、慢性腎疾患などがある場合は、タンパク質制限が必要な場合があるため、必ず医師に確認と相談をしてください。

手ばかり法で1日に必要な栄養を摂取!

頭ではわかっていても「めんどくさい!」「よくわからない!」という人には、手ばかり法をオススメします。

1日に必要なタンパク質量は肉、魚、卵、大豆類など片手4つ分とされています。

ぜひ参考にしてみてください。

参考引用:1日の目安って? 手ばかりをマスターしよう!~協会けんぽ岡山支部バージョン~

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Images/26041401/sumatore/2014110401.pdf

手軽な市販品も活用しよう

最近では、タンパク質を多く含んだヨーグルトや飲み物、混ぜるだけでタンパク質が補給できる粉末状の栄養補助食品も市販されています。

食事だけではタンパク質が摂取しにくい場合は、高タンパクの市販品や栄養補助食品なども活用してみるとよいでしょう。

まとめ

今回は、高齢者が気をつけたいサルコペニアと予防方法について解説しました。

サルコペニアは全身の筋肉量が減少し、筋力低下や身体機能を伴う状態をいいます。

サルコペニアの原因には、加齢によるもの以外にも活動量の低下や病気、栄養不足に関連するものなどがあります。

普段の食生活と運動を心がけることで、サルコペニアを予防することができます。

ここで紹介した手ばかり法や食事と運動のタイミングを参考にしながら、食生活を見直してみることも大切です。

もしかしたら自分も当てはまるかもしれないと感じたら、医師や専門家に相談してください。

参考文献:PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 : 栄養ケアがリハを変える | 医歯薬出版 第2版

https://cir.nii.ac.jp/crid/1130000796003833472