「親が認知症になったかもしれない…」
「最近身体的な不調を訴えるようになった」
「最近元気がないなぁ…友人との別れで寂しいのかな」
これらは、加齢や認知症の症状ではなく、「高齢者うつ」の症状のひとつです。高齢者のうつ病は、認知症とならんで重要な問題のひとつとなっています。
厚生労働省の行った調査では、日本人のうつ病有病率は6.2%と報告されています。すなわち、日本人の16人に1人は、うつ病にかかる可能性があると考えられているのです。
また、アメリカの研究では65歳以上の高齢者の10%には、何らかのうつ病性障害が認められるという結果も出ています。
高齢者のうつ病は、他の世代のうつ病よりも社会的・医学的背景が複雑に関係しています。今回は高齢者うつ病とサポート方法や対策について解説していきます。
うつ病とはどんな病気?
うつ病は、脳のエネルギーが欠乏した状態です。気分が落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなって意欲低下がみられたりします。
誰でも落ち込んだりやる気が出なかったりすることはあります。うつ病の場合は、朝起きれなくなってしまったり、ひどい場合は動けなくなってしまったりして、日常の生活にも支障が出てくる状態になるのです。
うつ病の原因
うつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの量の減少が主な原因とされています。これらの物質が減少することによって、情報伝達がスムーズに行われていないことがわかっています。
さらには、薬物によるうつ病や脳血管性病変による血管性うつ病など、うつ病が発症するきっかけは様々です。
高齢者うつの特徴とは?
高齢者のうつ病は、若年層のうつ病とは異なる特徴があります。
高齢者うつの主な症状
高齢者うつの症状は以下のとおり挙げられます。
- 悲観的な訴えが少ない
- 意欲集中力の低下
- 気分の低下
- 認知機能の低下
- 心気的な訴えが多い
- 身体的な不調
- 物覚えが悪くなる
- 記憶力の衰えに関する訴え
ご覧の通り、高齢者のうつは加齢や認知症によく似た症状があります。また、認知症外来を受診する患者の5人に1人はうつ病性障害であるとも。
軽視していると、うつ病の症状が重くなることもあるため、気になることがあればすぐにかかりつけ医にご相談ください。
別れや喪失感がうつ病の引き金に
高齢者は、長い人生の中で多くの別れや喪失を体験しています。
- 健康や体の機能が衰える
- 退職や 子供が独り立ちすることで社会的役割を失う
- 収入が減少し、経済力が低下する
- 配偶者、家族、友人との別れや死別
これらの喪失体験が重なることで、うつ病の引き金になることも少なくありません。
身近な人との別れは特に注意が必要
配偶者や近親者、友人など身近で親しい関係の人と死別した時は、特に注意が必要です。
そういった場合には、 頻繁に訪問して注意深く様子を確認することが大切です。
- 抑うつ症状が6ヶ月以上続く
- 死んだ人と一緒になりたいという気持ちが強い
- 死を避けるために何かできたのではないかという罪悪感が続き、自分を責める
このような状態が続く場合には、受診をするようにしましょう。
精神症状よりも身体症状を強く訴えることも
前高齢者のうつでは、精神症状より身体症状を強く訴える場合があります。
例えば、以下のような訴えがあります。
- 不眠や1日中眠たい、ウトウトしているなどの過眠などの睡眠に対する訴え
- 食欲不振、過食
- めまいや強いの疲労感
- 頭痛や腰痛
- 身体や身体の節々の痛み
- 便秘や下痢
このような訴えをされると、周囲の人達も身体の不調の方が気になってしまい、精神面の不調や変化を見逃してしまいがちです。
高齢のうつでは、体の状態についての配慮と認知症との区別が大切なのです。
高齢者のうつ病に対する治療や対策、接し方は?
高齢者のうつに対する治療は、薬物療法、カウンセリングなどの精神療法などが中心に行われます。
薬物療法では、その人に合う抗うつ剤などを服用して経過をみます。高齢者の場合は、複数の疾患を持っていることが少なくありません。お薬手帳などを活用し、医者や薬剤師に服用中の薬との相性などを確認してもらいましょう。
周囲の人の理解を得たり、本人がプレッシャーを感じないような声かけや本人のペースで生活できるような環境調整も大切になってきます。
心の健康をチェックしよう
高齢の方で、最近元気がない、やる気が出ない、と感じる場合は、下記の各項目をチェックしてみましょう。
- ひどく気分が落ちこむ・何となくもの悲しい
- 何となく不安で落ち着かず、イライラする
- さびしい、せつない、自分が情けないなどの 感情がある
- 今後の生活について不安であり、自分に自信 がもてない
- 物事を決めようと思っても、判断を下すのに苦労するようになった
- 何かしようと思っても、根気が続かない(集中ができない
- 寝つきが悪い・夜中に何度も目が覚める・十分に眠った感じがしない など
- 食欲がなく体重が急激に減ってきた
- 自分が周りに迷惑をかけていると強く思う
- 好きだったものや趣味に興味がなくなった
チェックで「はい」の項目が多い方は、医者や地域の精神保健福祉センター、地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
無理強いをせず本人のペースに合わせる
本人の意志やペースを大切にして、決して無理強いはしないようにしましょう。
散歩などの軽い運動はうつ病に良いとされていますが、無理に促すとプレッシャーを感じて状態を悪くする可能性があります。
また、本人への声かけも「頑張って」より「よく頑張ってるね」と”ねぎらう声かけ”を心がけるようにしてください。
過剰に反応せず今まで通りに接する
周囲が心配しすぎると、本人も気にしてしまいストレスに感じてしまうことがあります。
うつ病の診断が出ても、今までどおりに接することが大切です。
身の回りのことや生活面において、過剰に介助する必要はありません。
本人ができることや今までおこなっていたことは、無理のない範囲で続けてもらうことが大切です。
まとめ
高齢者うつは、さまざまなきっかけで誰にでも発症する可能性があります。
高齢者のうつは、認知症と間違えられることが多く、若年層のうつとは症状の出方が異なり、身体の不調が目立つ傾向にあります。
体調が悪くなっても、高齢だから…と自ら病院を受診することが少なく、発見が遅れることも少なくありません。
少しでも早くつらい状況から回復するためには、家族や周りの人の気づきが重要となります。
「元気がないな、、、」
「おかしいな、、」
そう感じた際には、早めに専門機関や病院、地域包括支援センターなどに相談しましょう。