【ビジネスケアラー】仕事と介護を両立させる方法とは?

【ビジネスケアラー】仕事と介護を両立させる方法とは?

日本は少子高齢化が進み、介護がますます身近な問題となっています。共働き世帯が一般的になり、働きながら介護を担う「ビジネスケアラー」も増加傾向にあります。

本記事では、ビジネスケアラーの現状と直面している問題、そしてこれからの個人や企業が取り組むべき課題に焦点を当てて解説していきます。少子高齢化社会において、ビジネスケアラーが果たす役割はますます重要となっており、その認識を広めることが必要です。

ビジネスケアラーとは

ビジネスケアラーとは?

ビジネスケアラーとは、仕事と介護を同時にこなす人々を指します。

リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」によると、45〜64歳の雇用者のうち、2021年12月時点で介護を担当している人は9.7%に上ります。その中で正社員の場合、その割合は9.2%と報告されています。

この数字は、キャリアを築き、役職を果たすなど、職場で中核的なポジションを占める「働き盛り世代」のうち、約10人に1人が介護に携わっていることを示しています。また、2030年には家族介護者が833万人に増加し、そのうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーと予測されています。これに伴い、ビジネスケアラーの離職や労働生産性の低下によって引き起こされる経済損失は約9兆円に達するとされ、その影響の大きさが国や企業の関心を集めています。

ビジネスケアラーが増えている背景

 ビジネスケアラーの増加には、以下の6つの背景が挙げられます。

  1. 少子高齢化
    人口構成の変化に伴い、働く世代が減少し高齢者が増加しています。
  1. 高齢者の人口割合の上昇
    高齢者が全体の人口に占める割合が増加しており、介護が必要な状況も増えています。
  1. 高齢者平均寿命の上昇
    医療の進歩により高齢者の寿命が延び、健康状態の維持が課題となっています。
  1. 未婚化や兄弟姉妹の数の減少
    伝統的な家族構造の変化により、介護を担う支えが減少しています。
  1. 共働き世帯の増加
    両親が働く共働き世帯が増え、介護負担が増大しています。
  1. 晩婚化
    結婚や出産が遅れる傾向があり、介護が必要な家族が高齢になる前にビジネスケアラーとして働くケースが増えています。

また、ビジネスケアラーだけでなく、仕事と育児介護が同時に進行するダブルケアラーや、未成年のうちから介護を担うヤングケアラーの存在も注目されています。これらの変化から、複数の役割を果たしながら介護を担う時代が到来していることが示唆されます。

ビジネスケアラーが抱える問題

ビジネスケアラーが抱える問題とは?

ビジネスケアラーは、仕事と介護を両立する上でどのような問題を抱えているのでしょうか?

介護に関する知識を持たない

介護はある日突然始まり、24時間365日休みなく続きます。

また、生活のリズムも大きく変化し、仕事を抱えながら介護を担うには大きな負担がかかります。

特に介護が始まった直後は、慣れない介護に加えて、役所への手続きやケアマネ・家族との話し合い、介護サービスの手配など多くの変化と負担が生じます。

自分自身の価値や仕事を失う不安

「やりがいのある今の仕事から外されるのかも…」

「昇格や昇進が難しくなるのでは…」

介護を担うビジネスケアラーは、仕事やキャリアについての不安を抱いています。いつまで続くかわからないという不安は、未来の見通しを持つことが難しくなるのです。

このような不安が増大すると、仕事を続けることへの不安が強まり、働くことへの意欲が低下してしまう恐れがあります。ビジネスケアラーが自身の価値と仕事を保ちながら、介護とのバランスを取るサポートが重要です。

自分の中の悩みや葛藤

ビジネスケアラーは、介護によって働く時間が限られるため、仕事の内容や進め方にも見直しが必要になってきます。

例えば、介護者が急に体調を崩したり、突発的な事態が起こったりしたときに、介護と仕事の優先順位を考えながら行動しなければなりません。

介護を優先しても、仕事を優先しても『モヤモヤとした葛藤』を抱えてしまい、本当に両立できているのか悩むビジネスケアラーも少なくないのです。

職場に相談できず同じ立場の人を見つけられない

ビジネスケアラーの中には、責任ある役職に就いている人も多くいます。

そのため、以下のような懸念から勤務先に介護を担っていることを伝えずにいる人がいます。

  • 自分の仕事がなくなってしまうのではないか
  • ポストから外されてしまうのではないか
  • 積み重ねてきたキャリアに支障が生じるのではないか

このような行動をとってしまうと、誰が介護をしているのかが見えづらくなり、ビジネスケアラー自身が孤立してしまうのです。

ビジネスケアラー同士で相談し合うことで、安心感を得ることができます。介護をしながら働く際に役立つ情報を共有することができるからです。

ビジネスケアラーが、今後に見通しを持って安心して働くためには「ビジネスケアラーであること」をオープンにして、相談できる環境づくりをすることがとても重要なのです。

自分らしく働きながら介護を両立させるには?

自分らしく働きながら介護を両立させるには?

仕事と介護を両立していくにはどのようなことが必要なのでしょうか?

ここでは「個人で考えること」「企業側が取り組みたい体制」についてご紹介していきます。

介護が始まる前から地域の情報収集をしておく

介護が始まる前に、介護保険制度や会社の支援制度、親が住む地域の包括支援センターやかかりつけ医などについて情報収集を行っておきましょう。

介護が始まった直後は変化が大きな時期です。事前に情報収集をしておき、介護のイメージを持っておくことが大切です。

介護について気軽に話せる職場の環境づくり

仕事と介護を両立する悩みや工夫を気軽に相談できる職場環境であれば、同じ悩みを分かち合うことができ、精神的な負担も軽減します。

そのためには、職場で介護をしている社員が「介護をしていること」をオープンに話すことができる環境が必要です。

しかしながら、企業や上司、同僚への信頼感がなければ相談しにくいと感じてしまうでしょう。

ビジネスケアラーが相談しやすい環境にするためには、上司をはじめ、社員全員が介護の正しい知識を持つきっかけや、機会づくりが必要になります。

実際の取り組みとしては、ビジネスケアラーが集まるコミュニティを推奨したり、仕事と介護の両立を実践するロールモデルの話を聞く機会を設けたりして、ビジネスケアラー同士がつながるきっかけを作ることが大切です。

仕事と介護の両立で仕事の効率を高めやりがいを感じるきっかけに

ビジネスケアラーは、限られた時間の中で、仕事と介護をこなさなければなりません。

しかし、一見マイナス面のように感じる介護と仕事の両立にも、メリットはあります。

たとえば、仕事のやり方や捉え方を見直したり、 同僚と協力しあえる関係を作ったりして、「より自分に合った仕事の形を作ろう」と主体的な行動に繋げることができます。

こうした行動は「ジョブ・クラフティング」と呼ばれ、職務満足や仕事・役割へのやりがいを高められることでも知られています。

企業として考えたいことは、仕事と介護など予定が重複した場合に、仕事の調整を支援したり、重要な仕事を任せ、部下が自律的に判断できるように促したりすることです。これは、双方にとって良い方向に働く可能性があります。

本当に困ったときには周りに頼れる状況を作った上で、介護をする社員に重要な仕事を任 せていくことが、ビジネスケアラーの支援へと繋がっていくのです。

悩みを抱え込まないビジネスケアラーへ

悩みを抱え込まないビジネスケアラーへ

今回は、働きながら介護をするビジネスケアラーについて紹介しました。

ビジネスケアラーは、働き盛り世代が多く、責任を伴う役職についている人も少なくありません。

ビジネスケアラーは、介護と仕事の両立に悩み職場に相談できていないケースも多くあります。

しかし、仕事と介護が同時進行することは、決してマイナス面だけではありません。介護を通して得た経験が、仕事に活かせることも多くあるのです。

企業側もビジネスケアラーが1人で悩みを抱え込まず、介護の経験を業務に活かせるよう、積極的な支援を考えていくことが必要です。