日本は高齢者の人口が多い国であり、その高齢者層が積極的に旅行を楽しむことで、経済の促進に繋がると言われています。
しかし、調査によると加齢に伴う身体の衰えから、70 歳以上の高齢者の宿泊旅行回数は、60 代の宿泊旅行回数より減少することがわかっています。
実際に日々接している高齢者の方々からも、「足が悪くなければ旅行に行きたい」などの声が聞かれ、潜在的には旅行を楽しみたいという気持ちを持っている方が多い印象です。
では、実際に要介護になると旅行は難しいのでしょうか?今回は要介護になっても旅行を楽しむための準備やポイントについてお伝えします。
要介護になると旅行に行けない?
結論から言いますと、要介護状態になっても事前の準備や工夫次第で十分に旅行を楽しむことができます。
ではなぜ 70代以上では宿泊旅行回数が減少するのでしょうか?
体調面の不安から旅行回数が激減
日本観光振興協会の調査によると、旅行に行かない理由として69歳以下では「経済的余裕がない」「時間的余裕がない」という理由が合わせて4割を超えています。
それに対し、70歳以上では「健康上の理由で」が約3割と最も大きな理由となっています。
これらの結果から、60代以下では時間や金銭面の理由から旅行へ行かない人が多いのに対し、70歳以上では、加齢や体力、健康への不安が原因で旅行に行かなくなるということがわかります。
旅行の同行者が感じる困難さ
要介護者と旅行したことがある家族などは、どのように感じているのでしょうか?要介護者と旅行したことのある同行者に、旅行した際にどのようなことに困難を感じたか調査した結果、以下のような回答が多く集まりました。
- 「要介護者が宿泊先で入浴することが難しい」(44.7%)
- 「自分が疲れる」(43.0%)
- 「要介護者が移動中にトイレに入ることが難しい」(39.9%)
- 「目的地での移動が難しい」(38.6%)
要介護者は車椅子を使用していたり、歩行などの問題で早く歩くことが難しく、慣れない施設や宿泊先での移動に不安があったりすることが上記の結果から推察できます。
また、4割以上が入浴に困難さを感じています。日本は温泉地も多く、入浴設備が整っていないと、入浴自体をあきらめるということもあるのです。
さらには、旅行先での急な体調不良を心配する回答も挙がっています。
要介護者との旅行で確認しておくべきポイントとは?
では、要介護者と安心して旅行に行くためにはどのような準備や心構えをしておけばよいのでしょうか。
時間にゆとりを持った計画
高齢の方や介護が必要な方との旅行は、時間に余裕をもって計画するようにしましょう。車椅子での移動や杖歩行では、スムーズに移動することが難しくなるからです。
スケジュールを詰め込み過ぎてしまっては、ついつい行動を急かしてしまいがち。そういった気持ちの焦りが、事故や転倒に繋がったり、お互いイライラしてしまったりと、せっかくの旅行がストレスになってしまいます。ゆとりを持たせた計画を立てるようにしましょう。
多目的トイレの場所を確認
トイレの場所は事前に確認しておくことが大切です。特に車椅子など、排泄に介助が必要な場合は、多目的トイレを使用することが多くなるからです。
駅・サービスエリア・道の駅・お店など旅行のルートに沿ってトイレの場所を把握しておくようにしましょう。また、着替えやオムツ、尿取りパッドなど必要なものを多めに準備することも大切です。
宿泊先の設備を確認
車椅子を使用していたり、自立歩行が難しかったりする場合は、宿泊する旅館やホテルの設備を事前に調べておく必要があります。
バリアフリーに対応した宿泊先を優先して選びましょう。
- トイレに手すりがあるか
- 車椅子でも利用できるトイレか
- 施設内、部屋の段差の有無
- 浴室や浴槽の設備、介護用の浴用イスの準備
- ベッドのある部屋
など確認しておきましょう。
インターネットを活用すれば、色々な情報が掲載されていますが、インターネットに不慣れな場合は、後述する介護旅行専門のツアーを取り扱う旅行会社などに相談すると安心です。
急な体調に備える
旅行を楽しんでいても、環境の変化が体調に影響することもあります。旅行に行く前にはかかりつけ医に相談しておき、アドバイスをもらうようにしましょう。旅行先の医療機関などを調べておくと安心です。常備薬、貼り薬、塗り薬なども常に携帯しておきましょう。
要介護者の旅行に役立つサービスとは?
要介護の方と旅行するときには、専門のサービスを利用することでより安心して旅行を楽しむことができます。要介護の方と旅行する際に役立つサービスについて紹介します。
旅行会社の介護旅行サービス
介護旅行サービスとは、旅行会社が提供する要介護者のための旅行プランです。介護ヘルパーが旅行中の介助や夜間の見守りを行ってくれたり、看護師による体調管理が受けられたりするプランもあります。
介護の専門家によるサポートがついているため、安心して旅行を楽しめます。宿泊施設のリサーチも旅行会社が行ってくれるため、希望を伝えれば旅行者に適した宿泊先を提案してくれます。
トラベルヘルパー
トラベルヘルパーは、介護技術と旅の業務知識を持つ外出支援の専門家です。
身体に不自由のある人や健康に不安がある人の希望に応じて、身近なお出かけから介護旅行の外出支援をしてくれます。トラベルヘルパーを紹介してくれる協会や団体に依頼することで利用できます。
介護タクシー・福祉タクシー
介護タクシーや福祉タクシーとは、要介護者を目的地まで送迎するサービスです。介護タクシーには、介護保険が適用される「介護保険タクシー」、介護保険適用外のタクシーを「介護タクシー」として区別する場合があります。
介護保険タクシーは、介護保険で利用するタクシーであるため、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて、病院などの日常生活に必要な外出に利用できるサービスです。
ですので、旅行に旅行できるタクシーは介護保険外のタクシーと福祉タクシーの利用になります。
介護タクシーや福祉タクシーは、特に届出などは必要なく利用できます。車椅子に対応していたり、乗り降りのしやすい車両が導入されています。
料金は全額負担で、ドライバーは乗り降りの介助など身体的介助はできません。その代わり、介護保険タクシーのように同乗者に制限はありません。
近場への旅行や旅行先で観光するのに利用すると便利です。
事前準備と余裕のある計画で旅行をおもいきり楽しもう!
今回は、要介護の方でも旅行を楽しむための準備とポイントについて解説しました。
高齢になると体調面の不安から旅行回数が激減する傾向にあります。高齢者の方が旅行を楽しむことが出来れば、心身共によい影響があります。
要介護者との旅行では、事前の準備が大切です。費用はかかりますが、介護旅行専門の旅行会社に依頼すると安心して旅行を楽しむことができます。
その他、時間にゆとりを持ったスケジュールや、移動手段、宿泊先の施設、旅行ルート上にあるトイレや休憩場所を確認しておくことが大切です。
また、急な体調に備えて主治医に相談し、医療機関を事前に調べておくようにしましょう。