多くの人が一度は経験したことのある『こむら返り』。あるいは「筋肉がつる、つった」と表現することもあります。筋肉が「つる」という状態というは、筋肉が伸び縮みするバランスが崩れてしまうことで、異常な収縮を起こして痛みを伴います。
一般的には、運動中や運動後に起こりやすくなります。
しかしながら、高齢者の場合は足を酷使したわけでもないのに、頻繁に起きることがあります。
その場合、こむら返りする別の原因が潜んでいる危険性もあるため、注意が必要です。
そこで今回は高齢者が気をつけたい「こむら返り」について解説していきます。
こむら返りとは?
「こむら」とは、ふくらはぎのことです。こむら返りとは通称名で、医学用語は「有痛性筋痙攣」といいます。ふくらはぎに起こりやすい症状ですが、どこの筋肉でも起こりうる可能性があります。
また、年齢に関わらずだれでも起こる症状ですが、高齢になると有痛性筋攣縮を起こす頻度が多くなると報告されています。
どんなときにこむら返りは起こる?
では、どんなときにこむら返りは起こりやすくなるのでしょうか?
運動後や疲労が重なったとき
こむら返りは、急に体を動かしたときにおこりやすくなります。運動を長時間続けていたり、立ち仕事が続いていたりすることで筋肉が疲労しているときにこむら返りが発症しやすくなります。
特に高齢者の方は、運動不足になっている人が多く、筋肉が固く緊張した状態になっています。そのため、就寝中の寝返りや伸びなど、ちょっとした動きでもこむら返りを起こすことがあります。
冷えで血行が悪くなっている
血行不良もこむら返りの原因の一つです。筋肉がスムーズに伸びたり縮んだりできるのは、血流から必要な栄養を受け取っているからです。
例えば、ふくらはぎには下腿三頭筋という収縮力の強い筋肉があり、重力に抗して全身に血行を行き渡らせる大切な役割を持っています。
気温が下がって体が冷えてしまうと、筋肉も凝り固まってしまいます。すると、血流が滞って「血行不良」を引き起こしやすくなってしまうのです。
そうなると、血流を通して筋肉に栄養が十分に行き渡らなくなってしまうため、痙攣が起きてしまいます。
高齢者に多いこむら返りの原因とは?
こむら返りは幅広い年代で起こる症状ですが、高齢者が頻回にこむら返りを起こす時は、原因が「筋疲労」や「冷え」だけではない可能性も。病気や不調がある人は、健康な人よりもこむら返りが起こりやすいことがわかっています。
こむら返りが頻発する場合や、別の症状を伴う場合には、病気が潜んでいる危険性もあるため、早めに医師に相談するようにしましょう。
水分不足や脱水、イオンバランスの異常
脱水によるこむら返りは高齢者では多く見られます。また、熱中症の初期段階としても症状があらわれます。
夏場はもちろんですが、気温差が出やすい季節の変わり目や冬場にも脱水は起こります。
日頃から水分摂取の状況などをチェックしておきましょう。
また、腎臓の病気などで人工透析を受けていたり、下痢や嘔吐で体内の電解質バランスが崩れていたりするときもこむら返りが起こりやすくなります。
血管の病気
血管炎、バージャー病、閉塞性動脈硬化症、下肢静脈瘤など血管に何らかの異常が起き、血流が筋肉に十分に行き渡らない場合に足がつりやすくなります。皮膚の色が悪くないか、脈が触れられるか、足の冷感がないかなどチェックしましょう。
内分泌の病気
甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、アジソン病などの甲状腺ホルモンの分泌に異常をきたす病気では、血液の循環が悪くなるため、こむら返りが起こりやすくなります。
神経や筋肉の病気
脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなど脊髄を圧迫する疾患や、脳梗塞、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病など、脳や脊髄の疾患でもこむら返りが発症しやすくなります。
薬の副作用
薬の副作用でも起こりやすくなります。高血圧の薬、高脂血症の薬、抗がん剤、喘息の薬、利尿剤、ホルモン剤などを服用している場合は注意が必要です。
栄養不足
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルは、筋肉の働きに必要な栄養素です。
これらの栄養素が不足すると、神経からの命令がうまく伝わらず制御できなくなるため、痙攣が起きてこむら返りしやすくなってしまいます。
特にひとり暮らしの高齢者などでは、食事が疎かになりやすく、気づかないうちに低栄養状態になっていることが多くみられます。
普段からバランスのとれた食事を取れているかしっかりと周囲の人がチェックすることが大切になります。
こむら返りをおこした時の対処法は?
こむら返りになってしまった場合は、痙攣を起こしている筋肉をゆっくりと伸ばしていくようにしましょう。
ふくらはぎの場合は、足を前に投げ出すように座り、つま先を手でつかみ、手前側にゆっくりと引き寄せて伸ばします。太ももの裏がつった場合は、仰向けの姿勢からゆっくりと足を伸ばしたままあげて、太ももの裏をのばします。
痛みが落ち着いたらゆっくりと動きを加えてみてください。それから、入浴時に温めたりマッサージをしたりして、筋肉をほぐしてあげましょう。
こむら返りを予防するには?
こむら返りを予防するにはどのような方法があるのでしょうか?
運動やストレッチを習慣にする
ストレッチや適度な運動を通して日常的に筋肉を鍛えましょう。筋肉を伸ばしたり動かしたりすることで柔軟性のある筋肉になり、血行もよくなります。
おすすめはラジオ体操やテレビ体操、ウォーキングなど。無理なく続けられるものを選択してみてください。
水分や栄養摂取を心がける
日頃から十分な量の水分を摂取できているか、チェックしてみましょう。また、運動後には必ず水分と電解質を補給することも大切です。バランスのいい食事と水分補給で体内のミネラル(電解質)バランスを維持することを心がけましょう。
特に、ビタミンB1が不足するとこむら返りを起こしやすいといわれています。肉や豆類、緑黄色野菜、牛乳などで効果的に取り入れてみましょう。
頻回に起こる場合は相談を
こむら返りが頻回に起こる場合は、重篤な病気が影響している危険性があります。主治医や専門家に相談するようにしましょう。
まとめ
今回は高齢者が気をつけたい「こむら返り」について解説しました。
こむら返りは運動や疲労で起こりやすくなりますが、高齢者では重篤な病気が隠れている危険性もあります。その場合は、医師に相談するようにしましょう。
また、筋肉が硬くなり血行が悪くなるのを予防するためにも、日頃から運動やストレッチを習慣するようにしましょう。合わせて、水分摂取や栄養バランスに気をつけた食事を心がけるようにしてください。