「介護×スポーツ」で新しい機会と出会いを創造する、一般社団法人Utori Sports Community代表 狩野良太氏に活動の原点と想いについてインタビューしました

「介護×スポーツ」で新しい機会と出会いを創造する、一般社団法人Utori Sports Community代表 狩野良太氏に活動の原点と想いについてインタビューしました

高齢化の進む日本。少子化も追い打ちをかけ、約15年後の2035年には約3人に1人が高齢者という予測がされています。誰もが身近になる「介護」という課題に対し、独自の啓蒙活動を行っている方々にPoly(ポリー)がインタビューします。

今回お話を伺うのは、スポーツを通じて介護に触れるきっかけを創造する、一般社団法人Utori Sports Community代表、狩野良太(かの りょうた)さんです。

プロフィール

狩野良太
Utori Sports Community代表理事
株式会社E.Tライフケア
住宅型有料老人ホームフォーユー堺深阪 施設長
介護ステーションハイジ 顧問

2006年 病院で理学療法士としてのキャリアをスタート、介護予防教室の運営を担当し、約2年で560名の地域在住高齢者に対して、体操指導を行った。
その後老人保健施設へ転職
入所・訪問・通所にて認知症ケア、褥瘡(じょくそう)ケア、生活リハビリなどに携わる。
「もっと介護の面白さや可能性を知るために外の世界を見るきっかけを」
社内でスポーツに関するイベントを企画し、運営を始める。

2014年、Utori Sports Communityを設立
同コミュニティにて代表理事を務め、スポーツを通じた介護従事者や地域の高齢者の健康促進、新しい機会と出会いを創造している。
これまでのイベント参加者は述べ5800名。

自分の支えになってきたスポーツを通じて

狩野良太氏考える

Poly:
介護福祉とスポーツの掛け算のプロジェクトに取り組み始めたきっかけは何でしょうか?

狩野氏:
父親が地元奈良県でサッカーチームを立ち上げたことを機に、私自身も小学校2年生のからサッカーを始めました。
スポーツを通じて「楽しいこと」や「人との出会い」があり、「自分がしんどい時期」「グレそうになった時」に、スポーツが支えになって、戻って来れた経験があります。

Utori Sports Community(以下Utori)を始めるきっかけは、介護施設で働く中で、若い人たちに元気がない、あまり生き生きとしていない姿を見て、自分で出来ることは何だろうと考えた時に、ずっと小さい頃からやってきたスポーツを一つのきっかけにしてみようと思ったんです。

プロジェクトが立ち上がった経緯

Poly:
どのような経緯を経て、プロジェクトが立ち上がったのでしょう?

狩野氏:
自分で起案書を書いてやり始め、職場に負担してもらって参加するスタッフ分はタダにしてもらっていました。共同代表の池上(高齢者施設に楽しみを届ける出張デパートをやっている。現理事)と一緒に2ヶ月に一度のペースでフットサルイベントを開催していました。

回を重ねるごとに段々と参加してくれる人が増え、「フットサル以外のイベントもして欲しい」と。
バスケットボール、ソフトバレーボール、テニスと増え、今では、6種目を毎月1回開催するようになりました。

Poly:
元々は社内プロジェクトだったんですか?

狩野氏:
そうなんです。
元々は自分たちだけで悩んでいる社内の子たちに
「何か変わるきっかけ」「良い刺激をもらえる」
ように外部の同世代とつながる機会を作りたくて企画しました。

Poly:
社内プロジェクトからの派生ということですが、参加者は介護に携わる人たちだけなのでしょうか?

狩野氏:
はじめは介護や福祉業界に携わる人だけだったのですが、段々と広がって今は、介護を学ぶ学生、福祉に興味のある社会人、最近は高校生も参加してくれるようになりました。
大阪で開催しているんですが、最近は京都とか他府県からも参加してもらえるようになって嬉しいです。

Poly:
順調に広がっているんですね!

狩野氏:
皆様に支えていただき何とか続けられているといった感じです。笑
マンパワーもですが、資金的なところが特に厳しい状況ですね。主に参加者からの参加費と私たちの思いに共感してもらえる企業様からの協賛で運営していますが、大きなキャッシュポイントがある訳ではないので・・。
今後、クラウドファンティングにも挑戦しようと検討しています!

狩野氏が介護福祉の業界へ踏み込むきっかけ

住宅型有料老人ホームフォーユー堺深阪廊下

Poly:
現在、上記のようなプロジェクトに取り組まれている狩野氏ですが、そもそも介護福祉に関わるきっかけは何だったのでしょう?

狩野氏:
正直、理学療法士の学校に行くときはスポーツに関わりたいと思ってたんです。甲子園のメディカルサポートに行ったり、サッカーのチームでトレーナー的なことをしたりしていました。

母子家庭で母に金銭的な負担をかけていたため、安定した国家資格を取得し、母を安心させたいという思いがあり、理学療法士の養成校へ行きました。しかしながら学費の負担が大きく、先生に相談したところ就職する病院から学費を援助してもらえる制度を知り、療養型の病院に就職しました。

就職して3年を過ぎる頃に病院主催の「健康教室」の運営に携わる機会があり、運営の面白さに触れる機会がありました。
転職のきっかけは、地域の人とのネットワークが広がって行く中で、病院というのはどうしても病気をしないと行かない所であり、地域の人ともっと密にやりたい、距離感を縮めたいとの思いが芽生え、就職して5年が経った頃に、訪問も通所も、入所もあり在宅ケアを網羅できる老人保健施設に転職しました。

Poly:
なるほど、距離感ですか

狩野氏:
転職先では、認知症の専門棟に配属になりました。
やる気まんまんで入職したものの、認知症の影響でリハビリに対する理解が難しい方や、毎日初めましてと自己紹介をする方がいらっしゃいました。

そんな中で自分に何ができるかを考える為、朝から晩までフロアで介護士さんと一緒に、悩みながら日々接する中で少しずつ自分の役割が見えてきたと同時に、「介護士さんの仕事ってすごい!!」と思うようになりました。

「利用者さんの最も近くで24時間365日支えている仕事」「誇りある素晴らしい仕事」であることを実感しました。その反面、介護士さん達自身は「自己肯定感」を高く持てていない人が圧倒的に多く、もどかしさや苛立ちのような気持ちを感じていました。
「利用者さんが生き生きするためには、まず介護士が生き生きしていないと」「介護士さん達にもっと視野を広く持ち自分の仕事に誇りを持って欲しい」と思いました。すでに法人内の研修は充実していて、知識も十分身につけることは可能でしたが、いい意味で施設内で完結してしまうため、外に出る必然性がないと感じている職員も多くいました。
結果、柔軟な視点や積極性、自身の仕事に対する自己肯定感を高める機会が不足しているように感じました。

Poly:
それが現在の活動へ繋がってくるのですね

周囲の反応と変化

狩野良太氏が話す様子

Poly:
その時はみなさん積極的に参加してくれましたか?

狩野氏:
初めはこんなんやるので一緒に行こうよ!!と引っ張り出すような感じでした。
フットサルの後の飲み会でグッと距離が近くなりましたね笑

業界的になのか、比較的人見知りの人や大人しい人が多いこともあって、
「名前を呼んでパスを出す」
「ハイタッチする」
など一人で来た人も参加しやすい、「繋がりをつくりやすい」「安心安全の場」のための仕掛けを毎回工夫しながら改善してきました。

Poly:
それが徐々に広まり、他府県からも参加者が来るようになったんですね
今は開催するスポーツの種類も増えてるみたいで、運営上大変な部分もあるのではないでしょうか?

狩野氏:
新しいスポーツをするときは、できるだけコラボで運営するようにしています。
テニスだったら医療法人さんにサポートしてもらったり、バトミントンは理学療法士の方にコーチをしてもらったり。

自分たちだけでできることは時間的にも限りがある為、コラボしながら「参加できる選択肢」「自己肯定感の上がる機会」を増やしていきたいと思っています。

不定期開催でBBQをしたりもしてますが、今後は、家族で参加できる機会ももっと増やしていきたいと思っています。

Poly:
家族参加! いいですね!
新しい取り組みとしては他にもどんなものがあるのでしょう?

狩野氏:
参加者同士で繋がりを作ることをベースで考えながら、関わってくれる人が「やりたいこと」ができるようにサポートしていきたいと思っています。
実は、自分のやりたいことができる機会、経験って思ってはいても行動に移せることは少ないと思うんです。
なので、特に10代20代の若い世代にそういった機会を提供し、サポートしていきたいと思っています。

何か新しいことにチャレンジする経験って変わるきっかけにもなりますし、仕事にも活かせると思うんです。

介護業界をこれから目指す人、介護に関わる人へ

狩野良太氏笑顔

Poly:
ありがとうございます。
Polyでは恒例のメッセージセクションです笑

狩野氏:
そうゆうのがあるみたいですね笑
僕が一番感じていることは「介護福祉は面白い!!」ってことです。
介護保険の枠はあるんですが、介護保険外のサービスは自由度が高くて、まだまだチャレンジできることが多いんです。
仕事を通して、高齢者、子育て世代のお母さん、外国人、障がいのある人など、色々な人たちが生き生きと居られる場所、風土を作っていきたいと思っています。
何か役割を持って人に喜んでもらうことは何事にも代えがたい幸せだと思うんです。
高齢者の方にも役割を持ってもらえたり、自分のやりたいこと、好きなことを通して人の役に立つ機会を作っていきたいと思っています。

介護の知識は、一から身に付けるのは複雑で非常に難しいことだと思うので、僕たちのようなコミュニティと接点を持っておいて貰えると、僕たちに相談したりできますし、僕たちも何かお役に立てると嬉しく思います。
また、介護が必要な人の思いや気持ちを知ること大切なのですが、もしバナゲームを使うと、楽しみながらその人が望む価値観や心の中で思っている本音を知ることができますし、エンディングノートも良いと思います。

いつも息子さんの話ばかりする高齢である母親が、実は介護者である娘と最後まで暮らしたいと言う話を聞くことができ、母親と娘の関係性がぐっと深まったこともあります。

若い世代はなかなかイメージが付きにくくて、自分ごとになりにくいと思うのですが、ご家族や周りの人が何か困ったときに正しい知識を持っているかどうかで、望む生活ができるか変わってくるので知っておいて頂きたいです。

まとめ

今回のインタビューは、Utoriの代表を務める狩野良太氏が取り組んでいる活動と介護福祉業界に飛び込んだきっかけをお話し頂きました。
自分が好きなこと×介護福祉が、周りを巻き込むような大きな活動に変化するというのが、このインタビューを通じて得た教訓だと思います。

それでは次回のインタビューもまたお楽しみください!

施設前で販売されている玉ねぎ
施設前で販売されている玉ねぎ

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