意外と多い!脳卒中の約半分が合併する「うつ」にどう対処すべき?

意外と多い!脳卒中の約半分が合併する「うつ」にどう対処すべき?

脳卒中について

 平成26年度の「患者調査の概況(厚生労働省発表)」によると、全国で約120万人が罹患し、年間約30万人発症すると言われています。また死亡者数は毎年13万人で、がん、心筋梗塞、肺炎に次ぐ第4位の死亡原因とされています。
 脳卒中は多くの方が罹患する可能性が高く、テレビや新聞などの多くでその予防やリハビリテーションの重要性が叫ばれています。しかし、脳卒中に伴う身体の麻痺や生活面の障害がクローズアップされる中、脳卒中に付随する「合併症」についてはあまり取り上げられていないのが現状です。

脳卒中後の合併症は意外と多い

脳卒中は、

  • 呼吸器感染
  • 尿路感染
  • 痙攣
  • 転落

など、合併症の頻度は高く、その種類も様々です。
 その中で「うつ」の発症率は40%と高率であると言われています。うつの症状にも様々ありますが、特に顕著に認められる見られる症状としては「意欲低下」があります。を認めます。
 これら脳卒中後の合併症は、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の回復の阻害となり、リハビリテーションの進行に大きく影響します。

脳卒中の症状

 そもそも、「脳卒中」とは、「脳血管障害」の総称です。
脳の血管の障害には、主に以下の種類があります。

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血

脳の血管に障害があると、脳細胞に栄養が供給されにくくなるため、以下のような症状が出現します。

運動麻痺

 脳卒中によって手足が動かしにくくなる症状です。半身が動かせなくなると「片麻痺」、頭部以外の全体が動かせなくなると「四肢麻痺」、両足が動かせなくなると「対麻痺」と呼びます。

感覚麻痺

 運動麻痺と同様に、障害された身体の部位が「感じにくくなる」ことを感覚麻痺と言います。しびれやビリビリとした異常感覚を伴うこともあります。

うつが身体や心、リハビリにどのように影響を与えるか

 うつ症状による意欲低下は、

  • 他者と会話をしたくない
  • 部屋から出たくない
  • 何もしたくない

といった、日常生活全般に大きな支障を来します。
 また、リハビリテーションへの参加意欲の低下を引き起こし、効果的かつ集中的なリハビリテーションを受ける事ができず、身体の麻痺や言葉の障害などが残存してしまう恐れがあります。

うつの症状

 一見今まで通りに元気そうに見えても、実は弱音を吐けずに無理をしている場合があります。

  • 言動が悲観的
  • 元気がない
  • 食欲がない
  • やる気が起きない
  • なかなか寝られない

などの症状が特徴的です。 

なぜ、脳卒中でうつを合併すると問題か?

うつとなった原因を疾患別に見ると、心筋梗塞後や脊髄損傷後と比較して、脳卒中後が一番寛解(症状が軽減すること)に時間がかかっている事が知られています。脳卒中はうつになりやすく、また治りにくいと言えます。

また、脳卒中後に急性期の段階でうつを合併した場合は、合併しなかった場合と比較して10年間の死亡率が3倍以上になるという報告もあります。

さらに、うつに対する特別な治療も身体のリハビリテーションと併せて必要になります。薬物療法を始め運動療法、食事療法などきめ細やかな関わり方が求められることもあり、退院後の生活環境の調整を悩ませたり、介護者の負担を増大させる可能性があります。

脳卒中とうつを合併している方への対処法

  • やる気がない
  • 悲観的
  • 食欲がない

など、以前と少し違う様子が見られたら、できるだけ早めに専門の診察を受け適切な治療を受けることが重要です。
 うつに対する早期の治療により精神的な安定はもとより、リハビリテーションへの参加意欲が増大し、障害された身体機能の改善やQOLの向上を図ることができます。
 また日常生活に戻られても、前向きな気持ちが促進され社会復帰や他者との交流が取り戻されことに繋がります。脳卒中後のうつは合併しやすいという点を踏まえ、脳卒中患者の精神面の変化を、関わる周囲の人たちによって敏感に捉えて行く事が重要です。