育児や介護などの「care:ケア」の仕事は女性が担うことが多い仕事です。
ケアとは、広い意味では、世話や配慮、気配り、手入れ、メンテナンスをすることと定義されています。
乳幼児の世話からペットの世話、看護、介護などもケアにあたります。
ケアにまつわる歴史
生物学的な面ではヒトは群れを作りチームでケアをしてきました。
日本では1960代の高度経済成長に伴って、収入があがり長時間労働が増える中、男性は外に出て仕事、女性は家を守るという性的役割分業が加速していきました。
しかし、現代は女性の社会進出が進んできており、共働きの家庭も6割を超えています。
育児休暇取得率においては男女で大きな差がみられ、介護においても主介護者の7割が女性だといわれています。
時代は変わりつつあるのですが、以前のような性的役割分業の流れを引きずっており、家事、育児、介護、仕事と女性に求められる役割がまだまだ多いのも現実です。
「親孝行」が負担になることも
また、日本では親孝行として子どもが親の面倒をみるという思想が根付いており、親の介護を義務や責任と考えている人も少なくないと思います。
しかし、「自分が親の介護をしなければ」という意識は、時には介護負担を抱え込む要因にもなってしまうのです。
祖母の介護を経験して感じたこと
筆者は20代の頃、祖母の介護を経験したことがあります。
母方の祖母は1人暮らしをしていましたが、持病の糖尿病が悪化し、食事の管理と透析を受けなければならなくなり、私の両親が祖母を引き取ることになりました。
私は理学療法士として働いていたので、祖母を介護するうえで役に立てることがたくさんあるだろうと思っていました。
しかし、実際は想像以上に自分の無力さと介護の大変さを突きつけられたのです。
週3回の透析治療の為に送迎を行い、厳密な食事管理と内服を続けるましたが、状態は良くならず、体力も食欲もどんどん落ちていき祖母は寝たきりの状態になってしまいました。
食事と内服と排泄の世話で1日がどんどん過ぎていくのです。
母のストレスは増大していく一方でした。
母にはもっと介護サービスを利用するように説得しましたが、長女であり責任感の強い母はそれを受け入れませんでした。
ある日、祖母と二人きりで過ごした時のことです。何度も息をしているか確かめてしまうのです。
夜になると特にその不安が強くなり、もし体調が急変したならば…自分が深く眠ってしまったのなら、その異変に気づけなかったら、祖母が生きるも死ぬも自分の手に委ねられているようなそんな感覚に陥るのです。
介護と育児の共通点
母と共に祖母の在宅介護を半年間行い、祖母を看取った後、私は結婚し子供を授かりました。そして生まれたばかりの子供と夜を過ごしていると、祖母と過ごした夜に感じた不安と恐怖に襲われたのです。
小さなか弱い子供が、ちゃんと息をしているのか何度もたしかめました。
はっきりと自分の症状を伝えることができない人間を支えることの精神的な負担を改めて感じたのです。
ケアは1人では抱え込まずチームで行う
育児や介護のような、ケアといわれる労働は身体的にも精神的にも負担が大きいものです。
1人で抱え込まず、助けを求め、依存先を増やして欲しいのです。
依存先がたくさんある状態=安定した状態なのです。
時代はどんどん変わり、女性だけがケア労働を担うというスタイルは時代にそぐわなくなってきています。
自分がやらなければという意識は時には自分を追い込んでしまいかねません。
育児や介護は個別性が高く、これが正解というものはありません。
専門職は正解はもっていないかもしれませんが、ヒントはたくさん持っています。
ケアは1人で行うものではなく、医療介護の専門職や周りの人を巻き込んでチームで行うものなのです。
女性の強み、男性の強みを生かしたケアを
最近では育児や介護のケアの仕事にも男性が増えてきています。
男性は仕事を通して社会の中で生きてきており、社会を変える力を持っていると思います。
そういった男性が育児や介護に積極的に参加し、身をもってケアとは何か?感じることで、育児、介護を担いながら働ける企業・組織作りに大きく貢献できるのではないかと思います。