近年は、高齢化社会に伴う介護疲れが大きな問題となっており、虐待や自殺などのニュースも報道されています。
介護は少なからず身体的・精神的・経済的に負担がかかります。
最初は精神的な踏ん張りで、なんとか気持ちを維持することができるかもしれません。
しかし、介護は長期間に及ぶケースが大半です。上記の負担が少しずつ蓄積し、介護疲れにつながってしまいます。
介護疲れを防ぐするためにどうすれば良いのでしょうか?
介護疲れになるとどうなる?
介護疲れになると、
- 身体的
- 精神的
- 経済的
に種々の負担が出てきます。
身体的な面
介護には、ベッドからの起き上がり、椅子からの立ち上がり、入浴時の介助など様々な場面があります。こういった動作の介助を不適切な姿勢で行うと、介護者の腰や膝などに大きな負担がかかることになります。その結果、介護者が腰、膝痛などの身体的な痛みを引き起こす場合がよくあります。
また、認知症高齢者の昼夜逆転(深夜帯に活動的になり、朝から昼にかけて睡眠をとる)などの症状や夜中のトイレ誘導やおむつ交換によって介護者が慢性的な寝不足に陥ることもよくあります。
精神的な面
介護者は、毎日の介護においても精神的にも大きな負担となり、介護者自身がうつ病を発症するケースもよくあります。症状としては、憂鬱な気分になり、何事にもやる気が出ないようになったり、何事もマイナスの方に考えてしまうなど様々あります。
その結果、被介護者への虐待や介護者の自殺に繋がる可能性もあります。
特に、今まで大切にしていた家族に介護が必要になった場合、その家族を大切に思うが故に完璧を求めてしまい、適度な手抜きができない場合も多いです。そのような介護者ほどうつ病になりやすいとも言われています。
経済的な面
介護するために、介護用品を揃えたり、介護サービスを利用する必要性があるため、経済的にも困窮しやすい状況になりがちです。また、介護者が介護と仕事の両立が困難となり、介護離職(介護のために仕事を退職してしまう)してしまう場合も多くあります。
介護の負担が軽減し、復職できる状態になった場合でも、統計的に、再就職できる可能性が低くなってしまう傾向が示されています。
介護疲れの防止策
介護疲れを防ぐための一般的な方法をご紹介します。
身体的な面
介護では、被介護者(介護される側)の身体的負担ばかりを考慮してしまいがちですが、長く家族が介護を続けるために、介護者(加護する側)の身体的な負担を考慮することが非常に重要です。
適切な姿勢での介助
腰への負担を考慮した介助方法としては、介助時に腰への負担が大きくなる中腰姿勢をできるだけとらないように、股関節や膝を曲げ、重心を低くした状態で介助することで介護者の体を守ることができます。
また、介助時は力任せに介助するのではなく、てこの原理を使ったり、被介護者を必要以上に介助しないことも大切となります。
そのために、介助技術の方法を学ぶ場所に参加してみることも良いと思います。
Polyでもいくつか介助技術を紹介させていただいております。[知っとく]
介護力を身に付ける
おむつや衣服交換時の方法、入浴動作時やトイレ時の効率的な介助方法を身に付けることも身体的な負担を減らすためにとても重要になります。
これらは、インターネットで調べることもできます。
また、最近ではYouTubeで分かりやすい介護の動画がたくさんあるので、見てみると良いかもしれません。
精神的な面
心と体はセットで考えるべきでしょう。もちろん、精神的な面でも配慮が必要です。
第3者に相談する(ケアマネージャー、ヘルパー、市町村窓口)
親戚や近所の方々に自身の家族の事を相談しにくいという人も多くいます。そういった場合は、担当のケアマネージャーやヘルパーなどの介護についての専門的な知識を持っている人に相談することをおすすめします。
介護保険サービスの見直しなど専門的な観点からアドバイスがもらうことができます。
また、悩みを他人に打ち明けるだけでも、精神的に楽になります。
介護者の会を利用する
地域の方々が集まる場所や、インターネットではFacebookや各種SNSを通じて、介護者が意見交換を行う場所があります。介護者の会は介護をしている方々がお互いの悩みを話し合ったり、良い情報を交換し合ったりすることができます。
ここでは、お互い同じような悩みを持った方が参加しており、悩みだけでなく楽しみなども共有できる場所です。そういった場所に参加してみることも大切です。
経済的な面
介護の大きな問題の一つに、「長期間に及ぶこと」が上げられます。そのために、補助など様々な選択肢を適切に選択することが必要です。
介護保険の利用
- デイサービス(通所介護)
- ショートステイ(短期入所生活介護)
- 訪問介護
デイサービスは、日帰りで専門施設に介護を依頼できるサービスです。
デイサービス使用することで、介護者が日中の勤務が可能となったり、自身の時間をとることが可能になります。
ショートステイは、数日間、専門施設に介護を依頼できるサービスです。
ショートステイを使用することで、介護者が冠婚葬祭時や旅行の際に利用することができます。
訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、食事、排泄、入浴、清拭などの身体介護や掃除、洗濯、買い物、調理などの生活援助がサービス内容となっています。
上記以外にも介護保険サービスは様々あります。介護保険サービスを上手く利用することで、家族が行う介護量が軽減します。また、日中の仕事が可能となり介護離職を防ぐことができる可能性もあります。
施設を利用する
介護者への負担軽減を優先して、有料老人ホームや介護施設への入所する選択肢もあります。
施設入所に対して非常に抵抗を持っている人は多いですが、介護疲れに伴う様々な負担から介護者の健康状態を崩してしまうリスクを考えると、介護者、被介護者双方にとって良い場合もあります。
「介護のことは専門家に任せる方が被介護者も安心だ」という理由で施設を利用する方もたくさんいらっしゃいます。
まとめ
家族が介護を行う場合、介護疲れを予防するために、
- サービスや道具、施設を積極的に利用する
- 1人で絶対に抱え込まない
- 制度で分からないことがあれば、市町村など各窓口に相談してみる
- 介護の悩みを気軽に相談できる場所を探す
などの方法があります。
介護保険制度や医療保険制度、そのほか介護に関わる制度のことは簡単に理解するのは難しいので、相談できる窓口を作っておき、問題が起きたらその都度相談しながら進めていくのが良いと思います。