体の約60%が水分
私たちの体の約60%が水と塩分(電解質)が混ざった液体できています。
年代別の水分量は以下のようになっています。
- 小児70%
- 成人60%
- 高齢者50%
高齢者になるほど体液は少なくなります。
体液の働き
体液に含まれるものは、血液、リンパ液、汗、尿、唾液、涙、便などです。
体液の主な働きは以下の3つです。
- 体温調節
- 老廃物を運び出す
- 栄養素と酸素を運ぶ
体液の量が維持され正常に働くことで、体の健康が維持されているのです。
1番水分が含まれている場所は筋肉
身体の中で最も水分が多い場所は筋肉です。
体液の量は筋肉の量に比例します。
スポーツをして筋肉がしっかりとついている若い男性は脱水症になりにくく、脂肪が多い肥満体系の人、やせ形で筋肉が少ない人高齢者は体の体液が少ない状態ですので、脱水症をおこしやすくなります。
体液が少なくなっている状態が脱水症
脱水症とは体の中の水と塩分(電解質)が失われた状態が脱水症です。
脱水症になると体液のひとつである血液が減少します。
血液が運んでいる栄養素や酸素が細胞の中に運ばれにくくなります。
尿や汗などの体液も減り、老廃物が外部へ運ばれにくくなります。
汗が出にくくなると体温調節も行われず、体調不良や熱中症などの病気が起こります。
脱水症のタイプ
高齢者におきやすい慢性型
高齢者に起きやすい慢性型の脱水症は、食欲低下や病気療養で徐々に体液が減少したときに起きます。
病気により食が細くなり、食べる量や飲む量が減ってしまうと、身体に必要な水分がとれていない為、少しづつじわじわと脱水症が進んでいきます。
慢性型の脱水は電解質より水が多く失われます。
小児や健康成人にもおこる急性型
下痢や嘔吐してしまった時、発熱や屋外での活動時間が長く汗をたくさんかいた時、多量の尿が出た時などは急速に体液が減少している可能性があります。
急性型の脱水は水にくらべて塩分(電解質)が多く失われます。
高齢者が脱水症になりやすい理由
加齢による生理的変化や病気による身体機能の低下により高齢者は脱水症になりやすい傾向があります。
- 喉の渇きを感じにくい
- 腎臓の衰えで多くの水分が尿として出てしまう
- 暑いのに汗をかきにくい
- 筋肉量が少なくなり体にある水分量が少ない
- 暑さを感じにくくなる
- 利尿剤などの薬による影響
- 夜間のトイレや失禁が気になり水分を控えてしまう
特に一人暮らしの高齢者に多くみられるのが、加齢や病気により体が動きづらい状態になると食事の準備が面倒になってしまい、簡単なもので済ましてしまう生活が続き、徐々に栄養不足や脱水症が進行してしまうケースです。
高齢者は持病としてさまざまな病気をもっていることが多く、体調の変化があった時に脱水症だと気づきにくいのです。
脱水症のサイン
脱水症を簡単にチェックできる5つの方法をご紹介します。
①手が冷たい
②親指の爪の先を押して話した後、赤みが戻るのに2秒以上かかる
脱水症になると血液が少なくなります。
そうなると血液は生命に必要な臓器に優先的に集まるため、手足に血液が行きわたらず手足が冷たくなります。
③ベロが乾燥している
脱水症になると口の中の唾液が少なくなり、ベロの表面も乾燥してきます。
④腕の皮膚をつまんでみる。つまんだ形から元に戻るまで3秒以上かかる
皮膚には水分がたくさん含まれており弾力性が保たれています。脱水症になると皮膚の水分が減り弾力性もなくなります。
⑤わきの下が乾燥している
通常わきの下は汗により湿っています。
脱水症になると汗が減り、わきの下が乾燥してきます。
こんな症状がでたら要注意!
- トイレに行く回数が減っている
- 便秘になる
- 食べる量が減った
- 元気がなくなった、疲れやすい
- 昼間寝てばかりいる
- 暑いのに肌が乾燥してサラサラしている
- 微熱がある
- 認知機能の低下が見られる
- 口臭がある
- 歯周病による歯茎の腫れや痛みを訴える
- いつも食べている味なのに味がないなど味覚に異常がある
- 脇の下が乾いている
- 頻回にのどが渇く、口の中が渇く
- 二日酔いのような症状がある
- 日中トイレに6時間以上行かない
- 足がつる
あれ?いつもと違うなと感じたら要注意です。速やかに医師に相談しましょう。
経口補水液を使った脱水症のチェック方法
気になる症状がある場合は、試しにひと口、経口補水液(OS1:オーエスワン)などを飲ませてみてください。
脱水症なら甘く美味しく感じますが、脱水症でない場合は「塩辛い」「まずい」「飲みにくい」と感じます。
脱水症を予防するために
3食の食事とこまめな水分摂取が大切
脱水症を予防するには3食の食事をしっかりとる事とこまめな水分摂取が大切です。
3食きっちりと食事がとれていれば、1日に必要な塩分は食事から摂取できます。
その他以下のタイミングを参考に1日の生活に合わせた水分摂取をこころがけましょう。
- 起床時
- 朝食時
- 10時ごろ
- 昼食時
- 15時前後
- 夕食時
- 入浴前後
- 就寝前
1日8回を目安に、こまめな水分補給をこころがけましょう。1回の摂取量はコップ1杯程度で大丈夫です。
水筒やボトルに飲み物を入れて手の届くところに置いておくとよいでしょう。
日常的に摂取する飲み物は予防的な目的であればアルコール以外の飲み物であればなんでも水分補給になります。
脱水症がなければ、スポーツドリンクや経口補水液を日常的な飲み物として飲む必要はありません。
スポーツドリンクや経口補水液には塩分が多めに含まれているので、脱水症の症状が治まれば普段飲んでいるものに戻しましょう。
ただ、夏の暑い時期は発汗が多く熱中症になる危険も高いため、常備しておくと安心です。
食事や間食には水分を多く含むものを取り入れる
食事や間食で水分の多いものを取り入れることで、脱水症を防ぐことができます。
・お味噌汁やスープなどの汁物をとりいれる
・デザートにゼリー、プリン、ヨーグルト、果物などを取り入れる
・季節の野菜を使う
このような工夫で食事中に効率的に水分摂取することができます。
飲み込む力が弱い高齢者にはゼリー飲料やとろみ剤を利用する
加齢や病気により飲み込む力が弱くなることがあり、特に水分でむせてしまうことが多くなります。
このような症状がある方にはパウチに入ったゼリータイプの飲み物がおススメです。
また普段飲む物や汁物にとろみ剤を入れて飲みやすくする方法もあります。
ドラッグストアで入手できますので、気軽に相談してみてください。
夏場は熱中症にならないように環境を整える
高齢の方の中にはクーラーが苦手だという方も少なくありません。
加齢により熱さを感じにくくなる為、気温が上がっていることに気づかないこともあります。
見やすい場所に気温計や湿度計を置いておき、確認しやすくしておきます。
室温30度、湿度70%を超えたらクーラーを付けるよう注意喚起の張り紙をしたり、周囲の人が声をかけて環境を整えてあげましょう。
まとめ
脱水症状の概要を説明し、特に高齢者が発症しやすい(検知しづらい)ことについて説明しました。
こまめに適度な水分補給と適切な食事を心がけるという、基本的なことが大切なことがわかります。
周囲の人も水分補給を行う際は、ぜひ高齢者の方にも声掛けを行ってみてください。