「親の体調が優れないので介護をする必要があるかもしれない」
「介護離職は自分の家庭を守るためにもなるべく避けたい」
「仕事をこなしながら介護をするためにも使える制度を知っておきたい」
働き盛りの世代が直面しやすい問題の一つとして親の介護問題があります。
介護をしながら働き続けるにはどのような準備が必要なのでしょうか?
この記事では介護と仕事を両立するために知っておきたい制度や心構えについてお伝えします。
介護と仕事の両立
ひと昔前だと介護は嫁の仕事というイメージが強かったのですが、少子高齢化が進む現代では男女問わず家族の介護を担っているケースも少なくありません。
また、結婚年齢の上昇、出産年齢の上昇により仕事と育児、親の介護を同時に抱える「ダブルケア」や、未婚の子供が同居している親を介護するというケースも出てきています。
介護に直面した方の中には、その大変さゆえに仕事を辞めてしまう方もいます。
しかし、仕事をして収入を得ることは自分や家族の生活を守るために重要なことです。
介護をしながら働き続けるにはどのような準備が必要なのでしょうか?
介護と仕事を両立するために知っておきたい心構えやポイントについてお伝えします。
まずは職場に相談することから
介護をしている、または親の体調に不安があり介護の可能性があるという事を職場に相談しておきましょう。
介護をしていると通院に付き添うために休みが必要になったり、介護をしている家族が急に体調を崩し、急遽駆け付けなければならないということが起こるかもしれません。
自らが置かれている状況をありのまま上司や同僚に伝えることで、協力を得やすくなります。
介護はすべての人に起こりうる可能性のある身近な問題です。
「実はうちも…」といったように体験談を聞けたり、良き相談相手になってくれることもあります。
職場には介護をしている事、親が今どのような状況なのかを隠さず素直に伝えることが大切です。
介護休業制度を活用する
介護休業は介護をするための休業というよりも、介護の体制を整えるための制度と考えた方がいいかもしれません。
介護休業制度は以下の5つがあります。
・介護休業
・介護休暇
・残業の免除
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
各制度の概要について説明します。
介護休業
2週間以上の期間にわたり、常時介護が必要な対象家族を介護するための休業です。
対象家族1人につき通算93日に達するまで、3回を上限として分割して取得が可能です。
Ⅲ 介護休業制度 Ⅲ-1 介護休業の対象となる労働者 – 厚生労働省
介護休暇
要介護状態にある対象家族の介護や、世話をする労働者に対して与えられる休暇です。
1年間に5日間取得可能で、要介護状態にあたる対象家族が2人以上の場合は、10日間を限度として取得可能です。
介護休暇等に関する参考資料 – 厚生労働省
残業の免除
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が、その家族を介護するために請求した場合には、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはいけません。
時間外労働の制限
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が、その家族を介護するために請求した場合には、事業主は1か月で24時間、1年で150時間を超えて時間外労働をさせてはいけません。
深夜業の制限
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が、その家族を介護するために請求した場合には、事業主は午後10時~午前5時(深夜)において労働させてはいけません。
介護における労働時間短縮の措置として、
・フレックスタイム制度
・始業、終業時刻の繰上げや繰下げ
など労働時間短縮の措置を受けることができます。
各制度の詳細については、厚生労働省の育児・介護休業等に関する規則の規定例-[詳細版]をご覧ください。
他にも、介護に関する不安や悩みがある場合は地域のケアマネージャに相談しましょう。
ケアマネージャに何でも相談しよう!
ケアマネージャとは、ケアプランの作成以外にも要介護者の心身の状態や相談内容に応じて、事業所や施設と連絡を取り合う調整役なども担っています。
詳しくは介護支援専門員(ケアマネジャー)【厚生労働省】をご覧ください。
介護には膨大な労力と時間を要し、自分一人でこなそうとすると心身ともに疲れ切ってしまいます。
しかし、家族だからといってすべてを背負うことはありません。
困ったことや不安に思っていることなど、遠慮せず何でもケアマネージャに相談してみましょう。
介護は、
・家族にしかできない事
・家族以外でもできる事
に分けて考えることが大切です。
例えば市役所での申請や手続き、病院の同意書、サービスの契約、銀行の手続きなどは本人や家族が行う必要があります。
しかし、買い物や掃除などの家事の援助、食事、トイレ、入浴の介助などの身体的な介護は家族以外でもできる介護です。
子育てで考えてみると保育園、幼稚園、学校、塾、習い事など成長に合わせて親以外の人間の手を借りて、世話を受けたり教育を受けることはあたりまえのことです。
親以外の人間と出会う事で新しい視点が生まれたり、将来の可能性が広がります。
子供だろうが大人だろうが本質は変わりません。
高齢になると活動範囲が狭くなり、限られた交友関係になりがちです。
積極的に介護サービスを活用することが、新たな人と出会うきっかけを作ります。
介護する側は、身体的な介護を人に任せる事に罪悪感を感じる必要はありません。
家族にしか出来ないことを優先的に行い、その他の事は介護サービスを上手く利用するなど割り切って考えることが、介護と仕事を両立する大事な視点になってきます。
自分でなければできない事だろうか?という一歩引いた目線で考えることが大切です。
個人が職場でできる準備や心構えについて
職場には、介護との両立を理解してもらう必要があります。
準備や働く環境を整えて、自分から融通の利く職場を作り上げましょう。
そのために必要な準備や心構えは、以下の3点です。
・コミュニケーションがとりやすい環境づくり
・働き方改革に積極的に取り組む
・感謝の気持ちを忘れずに
1つずつ説明します。
コミュニケーションがとりやすい環境づくり
普段から同僚や上司とのこまめな情報共有をしておきましょう。
基本的な報告・相談・連絡をきっちり行うことで、急な休みにも対応することができます。
・申し送りノートの作成
・コミュニケーションツールの活用
家族の体調不良などで急に休んだりしても、出先から仕事の申し送りや大切な資料を送れるようにインターネットの環境を整えておくと良いでしょう。
働き方改革に積極的に取り組む
限られた時間の中で業務をこなすことになります。
無駄な業務がないか、本当に必要な残業なのか、無駄な時間の使い方をしていないか自分自身の働き方を見直す良いきっかけになります。
このような取り組みは、介護をしている人だけでなく、育児世代、プライベートの時間を大切にするという意味でも全ての世代にもメリットがあることです。
感謝の気持ちを忘れずに
いざ介護が始まると労働時間を配慮してもらう必要があったり、急な休みやまとまった休みをとることになります。
他の職員に負担がかかる可能性があるということを常に心に留めておきましょう。
助けてもらった時には、しっかりと感謝の気持ちを伝えることが大切です。
また自分に余裕があるときは、かわりに仕事を引き受けるなど、日ごろから良好な人間関係を築けるようにしていきましょう。
まとめ
介護と仕事を両立するためのポイントをお伝えしました。
職場には介護が必要な状況であることをきちんと伝えることが大切です。
まずは介護保険の申請を行い、気になることはケアマネージャになんでも相談してみましょう。
職場では上司や同僚とのこまめなコミュニケーションを心がけるようにして、助けてもらった時には感謝の気持ちをしっかりと伝えましょう。
1人で抱え込まず介護休暇制度や介護サービスを上手に活用し、仕事と介護の両立をしていきましょう。