「高齢になった両親の片方が要介護認定を受けた」
「なるべく身内には心配をかけたくない」
「一方は元気そうだし介護サービスはまだ必要ない」
介護を必要としている両親や配偶者、兄弟の介護を1人でこなそうと考えていませんか?
高齢者が要介護状態の高齢者を介護している状態のことを老老介護といいます。
日本は4人に1人が65歳以上の高齢者社会。
少子高齢化や核家族化が進み、高齢者の単身世帯や夫婦2人世帯も少なくありません。
しかし現在は、近くに頼れる身内がいない、子どもに迷惑をかけたくないなどの理由で介護する側も高齢者であるケースが増えています。
今回の記事では、老老介護で起こりうる問題や在宅で支えるために必要なサポートについて、実例も踏まえてご紹介します。
老老介護とは?
老老介護とは介護をする人、介護をされる人の双方が高齢である状態をいいます。
例えば高齢夫婦間の介護、高齢の兄弟姉妹間の介護、高齢の親とその子どもなど。
高齢者の定義は65歳以上とされていますが、明確な線引きはありません。
介護者自身も加齢や健康に不安のある状態で介護を担っている状態も含まれます。
老老介護で起こりやすい問題
老老介護には様々な問題が生じる可能性があります。
- 介護者の健康問題
- 社会との関わりが減少してしまう
- 認認介護
- 介護疲れによる事件
以上の4つは老老介護をする上で頻繁に取り上げられる問題です。
1つずつご紹介します。
介護者の健康問題
老老介護の問題点の1つに介護者の健康問題があります。
介護する側も高齢であるため、体力的にも精神的にも負担を感じやすく、最悪の場合は共倒れしてしまう危険もあるのです。
また、介護する側が持病を抱えているケースも少なくありません。
介護者自身も介護認定を受けており、治療を受けながら介護を担っている方もいます。
ある日突然介護者自身が転倒して骨折をした、病気が見つかり入院をしなければならなくなったということも決して珍しいことではありません。
社会との関りが減少してしまう
介護される側の状態によっては、徘徊や転倒が心配で目が離せないということもあるでしょう。
そうなると介護する側の趣味や外出の機会が減り、社会との接点が減少してしまう危険があります。
社会的接点の減少は、悩みを誰にも相談できず1人で抱え込むことになり、鬱状態や認知症の引き金にもなってしまう恐れがあります。
認認介護
老老介護の中でも、介護する側と介護される側の両方が認知症を担っている状態のことを認認介護といいます。
事故が起きやすい、体調の変化にすぐに気づけないなど問題が起きやすい介護状況の一つです。
その他にも、
- 食事の準備が不十分で、栄養の管理ができない
- 薬の飲み忘れ、内服の管理ができない
- 体調の変化に気づきにくく、体調管理や通院ができていない
- お金の管理ができない
認認介護になってしまっている場合は判断力の低下から、周囲に助けを求める事も困難になっているケースがあります。
認認介護を防ぐためにも、周囲の人達がいち早く気づき、対応することが大切です。
介護疲れによる事件
介護疲れによる殺人事件や心中のニュースが取り上げられることが多くなりました。
裁判で被疑者が語る苦しい胸の内に心を痛める人も多いのではないでしょうか。
介護に行き詰まっていたにも関わらず、誰にも相談できず抱え込んでしまったことがこのような悲しい事件の背景にひそんでいるのです。
介護についての悩みを抱え込まず、どんな小さなことでも相談することが大切です。
お住まいの役所や各自治体に設置された地域包括支援センター相談してみましょう。
在宅での老老介護を支えるには?実際のケースでみるサポートの対策
在宅療養は病院や施設と異なり、生活の場そのものです。
家族の関係性、役割、習慣などそれぞれの家庭で異なります。
そのような家庭環境をふまえて、介護者がどのような事に負担を感じているのか、丁寧に汲みとっていく必要があります。
老老介護のサポート例をご紹介します。
ケース①夫(自立)が妻(要介護4)を介護している
夫が妻を介護しているケースでは、世代的に妻が介護状態になるまで家事はすべて妻が行っていたという事例が多くみられます。
夫は介護に加えて慣れない家事をすることになり、食事や栄養面で不安を感じることも多いようです。
そのような場合は、配食サービスやヘルパーサービスを利用して家事援助を受けるとよいでしょう。
中には時代背景として仕事ばかりで家事をする機会がなかったというだけで、妻の介護をきっかけに料理や家事に目覚める男性もいます。
今まで妻が担ってきた役割を夫が行うことで、感謝の気持ちに改めて気づくということもあるようです。
ケース②妻(自立)が夫(要介護5)を介護している
妻が夫の介護をしているケースでは体格差や体力面から、身体的な負担が問題になるケースが多くみられます。
介護度が重くなると排泄の世話や車椅子からの乗り移り、更衣など体格差の大きい夫婦ではかなりの身体的負担になってしまいます。
ベッドから起こすことが大変なので、ついつい寝かせたままにしてしまうこともあるようです。
また、介護状態になっても身の回りのことは妻に任せるといった関係性が続いてしまうことも多く、妻に甘えて自立心に欠けるというケースがみられます。
入浴など介助量の大きいものは積極的にサービスを利用し、デイサービスなど通いのサービスをうまく利用して運動機会をしっかり作る、適度に離れる機会をつくるということも大切です。
まずは相談を!1人で抱え込まず地域で支えるという意識をもつ
高齢化社会が進む中、老老介護や認認介護はすべての人の身近な問題となっています。
離れて暮らす自分の親や兄弟、身内がいつそのような状態になっても不思議ではありません。
国は地域全体で高齢者を見守る方針を打ち出しています。
あなたの周りに住んでいる人達はみんな誰かの大切な人なのです。
いつもと様子が違う、困っている、元気がなさそうだ、しばらく顔をみていないなど、1人1人が見守るという気持ちをもつことで問題解決につながることもあるのです。
介護は1人でできるものではありません。
助けて欲しいと声を上げることも、人の手を借りることも決して悪いことではありません。
困った時は子どもや兄弟、親戚、身近な友人、行政などに相談する機会をもちましょう。