「車の小さな傷やへこみが増えた気がする」
「電車やバスで移動すればいいのにわざわざ車を使っている」
「運転免許を返納する気配が一切ない」
実家に帰ってみたら、親の車にいくつもの傷がついていたり、へこみがあったらとても心配になりますよね。
近年、高齢者ドライバーの交通事故が多く取り上げられるようになりました。
原因は、高齢化社会によって運転免許を保有する高齢者が増えたためです。
これは過去の歴史の中でも前例のない事態といえます。
本人が納得した上で免許を返納するために、家族はどのようなことができるでしょうか。
今回は高齢者ドライバーにおきる事故の特徴や家族に上手く運転免許返納を促す説得方法についてお伝えしていきます。
高齢者ドライバーにおきる事故の特徴
高齢者ドライバーの事故原因として考えられるものは、
- ブレーキとアクセルの踏み間違いなどの操作ミス
- とっさの判断の遅れ
- 高齢になるほど疾患をもっている割合が増えてくる
などがあげられます。
いずれにおいても加齢による記憶力、判断力、記憶力、注意力など認知機能の低下や、視力や聴力、筋力など身体機能の低下も大きく関連しています。
また、今まで運転を長期間してきた人ほど自分は事故を起さない、大丈夫だと思い込む傾向にあります。
その結果、本人が今まで経験したことがない危険な事態が発生すると,パニック状態となり適切な危険回避行動をとれなくなってしまいます。
そして、高齢になるほど何らかの持病を持っている人が増えます。
持病のコントロールができない高齢者の場合、急に症状が悪化したり、突然死に至るケースも少なくありません。
運転中にそのような事態にならないよう内服や体調管理をきちんと行い持病のコントロールをしなければなりません。
運転者自身が客観的に「常に自分の能力や身体状況を認識できているか?」ということが安全運転を継続するための判断ポイントといえるでしょう。
上手に免許返納を促すコツ
事故を起こせば人の命に関わってしまうため、誰が見ても明らかに危険な状態であれば無理にでも止める必要があります。
しかし、できれば本人が納得した形で返納するようにしたいものです。
強引に返納を進めてしまうと、その後の信頼関係にヒビが入ることもあります。
- 公共交通機関が不便
- 通院や買い物が不便になる
- 車に乗ること自体が長年の趣味である
- 仕事や趣味のために車の運転が必要である
- 証明書として持っておきたい
など免許返納に踏み切れない理由として様々な理由があげられ、一人一人の事情も異なってきます。
なんとなく危なそうだからという理由で説得を試みるのではなく、車を運転し続けることにどのような意味があるのか?をしっかり聞き取った上で対策を立てることが重要です。
返納することで得られるメリットや生活方法の提案
各自治体では免許を自主返納することによって、さまざまな特典を受けられるようにしています。
タクシーチケットの発行や公共交通機関の割引、娯楽施設の割引、配送サービスなどがあります。
親が住む地域ではどのようなサービスが受けられるか調べてみましょう。
車を保有することで年間の維持費とタクシーを利用した際にかかる費用を具体的に数字に出して比較するのも有効です。
タクシーを利用したほうが費用が安くなるとなれば、より説得しやすくなるでしょう。
健康面でもメリットが多くなると言えます。
車を持たない人は、歩く機会が多くなり足腰も丈夫です。
身近にそのような人がいれば、説得するためのよい見本になりますね。
ずっと車での移動に慣れていた人が、身体の不調をきっかけに車の運転を辞めることがあります。
そのときに公共交通機関に乗り慣れていない場合、移動がおっくうに感じて引きこもりがちになるケースがあります。
できれば日常生活が自立している時から、車での移動と公共交通機関を利用した移動を併用して生活することを意識してみましょう。
信頼している人や専門家に説得してもらう
家族の言うことは聞かなくても、医師や専門家、信頼している人の説得で納得するケースもあります。
特に男性高齢者の場合は免許を持っていない人からの説得や妻・娘など女性のいう事は聞きいれないことも多いようです。
明らかに危ない運転をしているのに運転を辞めないなど、対応に困った場合は専門医師や警察に設置してある相談窓口を利用して対応してもらうのがよいでしょう。
特に認知症に関しては、道路交通法によって「運転免許を拒否又は保留される対象疾患」とされています。
各都道府県警察には加齢に伴う身体機能の低下で、安全な運転に不安のある高齢ドライバーやその家族が相談できる安全運転相談窓口が設置しています。
看護師等の医療系専門職員をはじめとする専門知識の豊富な職員に相談することができるので利用してみてください。
小さなお願いから始めてみる
今すぐというわけではないけれど、年齢的に心配になってきた場合は小さなお願いから始めてみるのが有効です。
人間の心理を利用した交渉テクニックで「フットインザドア」という手法があります。
交渉や依頼をするときに本命の要求を通す前段階として、まず簡単なお願い事からスタートし、段階的に要求レベルを上げていくという方法です。
この方法を免許返納を促すということに応用すると、
- 運転する時は家族の誰かに同乗してもらう
- 暗くなってからは運転しない
- 高速道路は運転せず近場のみにする
など本人が聞き入れてくれそうな約束から始めて、段階的に運転の機会を減らしていくようにしていきます。
公共交通機関やタクシーを利用するなど、生活方法の提案を合わせて行いながら、車がなくても案外生活できるもんだなと気づいてもらうことができれば、免許返納へのハードルがグッと下がっていくでしょう。
まとめ
高齢の親や家族に上手く運転免許返納を促す説得方法についてお伝えしました。
高齢者ドライバーの事故が問題になる中、国や自治体は様々な特典を付けるなどして運転免許返納を促していますが、功を奏しているとは言えません。
なぜなら身体機能や認知機能は個人差が大きく、一定の年齢で線引きすることができないからです。
また住んでいる場所によっては、車がなければ生活が不便だという事情もあるでしょう。
緊急を要する状況でなければメリットや生活方法を提案をしながら、段階的に準備や心構えを促していくことが大切です。
うまくいかない場合は決して1人で抱え込まず、相談窓口などを利用し専門家の手を借りながら対応していきましょう。