【本当の”聞く力”とは?】介護で役立つコミュニケーションスキル

【本当の”聞く力”とは?】介護で役立つコミュニケーションスキル

誰かと会話をするときに、「この人は話しやすいな」と感じる人はどんな人ですか?
会話をしているときに、自分の話を興味津々で聞いてもらえたら嬉しく感じますよね。

話すことが苦手でも聞く力を磨くことができれば、人間関係を円滑にできます。聞く力がある人と話をすると安心感があるので、深い話や言いにくい話でも心を開いて話をしたくなるものです。

今回は介護で役立つスキル「聞く力、傾聴」についてお伝えします。

傾聴と心が求める4つの衝動

4つの衝動

聞く力が重要な理由は、本能的に人間が求める4つの衝動が関係しているからです。

  • 自己実現を求める衝動
  • 無条件の愛を求める衝動
  • 表現を求める衝動
  • 変わりたくないと求める衝動

自己実現を求める衝動は、自分らしく成長したい、困難や葛藤を乗り越えて自分の可能性を発揮したいと求める衝動です。
スポーツを頑張る、ケガや病気を乗り越えて職場復帰を目指すなどです。

無条件の愛を求める衝動は、母親が子供を無条件に愛するように、人から大切にされたい、関心を寄せてもらいたい、ありのままの自分を理解してもらいたいと求める衝動です。

表現を求める衝動とは、自分の心の動きや自分らしさを表現したいという衝動です。
例えば、おしゃべりをすることや好きなファッションで身を包んで自分の個性を出すこと、文章を書いたり、絵を描いたりすることも自己表現です。

変わりたくないと求める衝動は、自己実現と無条件の愛が満たされない時に起こります。

自己実現は自分の行いや行動に意味を見いだし、自分らしく人生を生きたいという命の本質でもあります。
ですが、自己実現をするためには困難や葛藤を乗りこえるパワーが必要です。
自己実現の衝動を発揮するには、無条件の愛を求める衝動と表現を求める衝動が満たされていなければなりません。

介護が必要な高齢者は病気や体力の低下が原因で自分がやりたいことを自由に出来なくなってしまいます。
その結果、自己実現をあきらめてしまったり、無気力になってしまう人が多いのではないかと考えます。

話すことは手軽な自己表現です。
聞き手がそれをしっかりと受け止めることで、以下のように感じ取ってもらえるかもしれません。

  • 自分の話をしっかりと聞いてくれた
  • 親身になって理解しようとしてくれている
  • ありのままの自分を受け入れられた

このように自分の自己表現を受け止めてもらうことで、無条件の愛を感じることができ、相手に対する信頼関係が深まるのです。
そういった人間関係の構築が自己実現をするための行動への第一歩へとつながっていくのです。

聞く力、傾聴の基本

傾聴の基本

相手の気持ちに寄り添うことが「傾聴」の基本です。
ここでは、傾聴の基本的なポイントについてご紹介します。

同じ立場にたって、話を聴くことを心掛けましょう。

沈黙にも意味がある

沈黙が訪れると落ち着かない気持ちになりますが、無理に話題をふって話そうとしないことが大切です。

一生懸命考えている最中かもしれませんし、頭の中で良い言葉を探している最中かもしれません。
嫌なことや悲しいことがあり、今は話したくない気分なのかもしれません。

相手の沈黙にはどのような意味があるのかを考えながら接してみましょう。

興味を持って聴く

傾聴とはただ黙って受け身で話を聞いているだけではありません。

話し手に興味を持ち、その人がどんな人なのか、何を考えているのか、興味関心をもって話を聴くことが大切です。
何かの作業をしながら片手間で返事をしていると、相手は「自分に興味がない」と感じてしまうかもしれません。

あいづちや態度で「あなたに関心を向けているよ!」ということをしっかり伝える必要があります。

共感を持って聴く、経験はなくても共感はできる

共感とは相手が感じている感情を自分が話し手になったつもりで想像したり、感じたりしながら感情を共有することです。

例えば、配偶者を亡くし悲しんでいる女性がいたとします。
自分はパートナーを失くしたことがなくても、自分にとって大切な家族や恋人、友人やペットが亡くなってしまったらどんな気持ちになるか想像することができると思います。

共感力を高めるには、他者の体験を聞いたり、小説や映画、ドラマ、漫画などの色んな物語にたくさん触れ、いろんな感情を知ることが共感力を高める練習になります。

自分の話はせず、相手の話に焦点を当てる

相手より専門的な知識をもっているとアドバイスしよう、指導しよう、問題を解説してあげなければという気持ちが出てしまいます。

正論を振りかざすことはせず、自分の考えや意見はいったん横に置いておきましょう。

相手の話に焦点を当てることが大切です。
傾聴する時は自分が話しすぎていないかという客観的な視点が必要です。

傾聴のテクニック

傾聴の基本

話をするときの簡単な心がけで、話し相手に安心感を与えることができます。

  • 相手の対面で向き合い視線の高さを合わせる
  • 大きくうなづく、表情を大切にする
  • 相手のバックグラウンド、話すスピードに合わせる
  • 相手が言った大事なキーワードをみつけ話し手に伝える
  • 繰り返される話も初めてのように聞く

以上のポイントを押さえて相手の話に耳を傾けてください。

相手の対面で向き合い視線の高さを合わせる

車椅子や椅子に座っている人に対しては自分も腰を下ろし目線の高さを合わせます。

話を聴くときは視線をしっかり相手の顔に向けましょう。

介護や医療の現場では業務が忙しく、ゆっくりと向き合う時間がないかもしれません。

しかし、目線を合わし、視線の高さを意識するだけでも相手が感じる印象は変わってきます。

相手のバックグラウンド、話すスピードに合わせる

先生と呼ばれる職業についていた博識な人ならば、簡単すぎる言葉づかいをされるとバカにされたように感じるかもしれません。
また、ゆっくりと話をする人もいれば、早口で話をする人もいます。

相手のバックグラウンドに合わせ言葉を選んだり、話すスピードを相手に合わせて変化するように意識してみましょう。

大きくうなづく、表情を大切にする

自分が話を聴くときは大きく頷き、「うん」「はい」「ほ~」などあいづちの声もしっかり出すようにします。

今はマスクをする機会も多く表情が伝わりづらい状況ですよね。
目の表情にも意識を向けて感情を表現するようにしましょう。

相手が言った大事なキーワードをみつけ、話し手に伝える

オウム返しをするだけでは意味がありません。
話し手が伝えたい感情や気持ちをあらわす大事なキーワードをみつけることが大切です。

悩みを人に打ち明けるときは、相手に悩みを解決してもらいたいと思っているのではなく、自分の気持ちを整理して答えを導きだそうとしているのです。

この人が本当に伝えたい事、聞いて欲しい気持ちはなんだろう?と相手の言葉に心を傾け、観察と分析をくりかえしていきましょう。

繰り返される話も初めてのように聞く

物忘れのある高齢者と話をすると、同じ話を何回もされて困ってしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、繰り返す話はその人にとって、心に強く残っている出来事であったり、大切な記憶なのかもしれません。

同じ話であっても初めてのように聴くことが信頼関係を築く上でも大切です。
また、同じ話でも質問をして聴き方を変えることでまた違った側面がみえてくることもあります。

まとめ

「聞く力」「傾聴」についてお伝えしました。

聴くという漢字には心という文字が入っています。
耳から入ってきた言葉を捉えるだけのものではなく、話し手が伝えたい言葉と気持ちに心を傾けることが本質です。

家族や友人、仕事仲間などあらゆる対人関係を築く上で役に立つスキルですので、普段の何気ない対話の中でも「聞く力」を意識してみてはいかがでしょうか。