「高齢の親が1人暮らしをしているけど心配」
「義父が病気を患ってから引きこもりがちで心配」
「親の介護について考えたいけれど、どこに相談していいかわからない」
家族や親の介護について考え始めた時に、まずどこへ相談したらよいのかわからないという人もいるのではないでしょうか。
そんな時、皆さんの助けになってくれるのが各市町村に設置された地域包括支援センターの存在です。
地域包括支援センターでは、介護にまつわる相談はもちろんのこと、介護予防から高齢によくおこる問題や高齢者の暮らしを守るためにさまざまな役割を担っています。
そこで今回は、地域包括支援センターの概要と地域包括支援センター担う主な4つの役割について詳しく解説していきます。
合わせて実際の事例もご紹介していますので、介護に対する不安や悩み事がある方は、ぜひこの記事をご参考ください。
なぜ地域包括支援センターができたの?
地域包括ケアを実現するためのまとめ役、中心的存在として設置されたのが地域包括支援センターです。
日本は急速に少子高齢化が進んでおり、現在国民の約4人に1人が65歳以上となっています。
このような状況の中、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要がさらに増えると予測されています。
これが俗にいう2025年問題です。
厚生労働省は2025年をめどに、地域で包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
わかりやすく説明すると
- 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮せること
- 人生の最後までを住み慣れた地域自分らしい暮らしを続けること
を目的として、介護保険制度による公的サービスや地域のサービスを活用できるように支援していくためのシステム作りを目指しているのです。
地域包括支援センターは各市町村に設置されています。
保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが在籍しており、それぞれの専門知識を活かしながらチームで活動しています。
地域包括支援センターの役割
地域包括支援センターは総合相談支援をはじめ、介護予防ケアマネジメントや包括的・継続的マネジメント、権利擁護などの役割を担っています。
それぞれの役割についてご紹介します。
総合相談支援
地域に住む高齢者やその家族が抱える困り事や相談に対して、必要なサービスや制度を紹介してくれます。
地域包括支援センターには、地域にある介護サービスや資源に関する情報が集約されています。
- 高齢の親に物忘れが多くなって心配
- 高齢の夫が骨折して入院しているが、自宅で介護できるか不安
- 脳卒中になったけれど、退院してからもリハビリを受けたい
このような介護にまつわるあらゆる相談を受け、その人に合ったサービスにつなげてくれる窓口的な役割を担っています。
介護予防ケアマネジメント
身体の不調や認知症の心配が出てきた時に介護サービスを受けるには、まず介護保険の申請が必要になります。
その中でも要支援1、2の判定が出た場合は地域包括支援センターで介護予防ケアプランの作成をしてくれます。
要支援判定の方は、生活する上で困りごとがあるかもしれせんが、ちょっとした手助けや運動を習慣づけることで身体機能を維持できる状態と判断されます。
要支援判定を受けた方々に身体状況の悪化を防ぎ、自立した生活が継続できるように介護予防を目的とした支援行うため、介護予防のためのサービス利用計画をたてる役割を担っています。
- 歩行の状態はどうか
- 交通機関を使って外出ができるか
- 日常生活の状況
- 家族・友人との交流、サークル、趣味など社会とのつながり
- うつ、認知症などの心配はないか
- コミュニケーションに問題はないか
などの日常生活の状況を把握、課題を分析した上でケアプランを作成し、デイサービス、訪問介護などの介護予防の効果が期待できるサービスを提案してくれます。
また介護保険認定で「非該当」の判定が出た人や、要介護認定を申請していないけれど、介護予防に取り組みたいという高齢者には、身体機能の維持向上や引きこもりを予防するための介護予防教室などを行っています。
包括的・継続的マネジメント
高齢者が抱える問題は多岐にわたり、1つのサービスで解決できるものではありません。
高齢者の状態は時間や場所とともに変化をし、発病や病状の悪化によって一時的に入院したり、家庭の状況に応じて在宅と施設での生活を行き来したりすることがあります。
高齢者の心身の状態や生活環境などの変化に応じて、適切な支援やサービスを組み合わせて提供できるよう、継続的なケアマネジメントが必要です。
そのために、地域包括支援センターが中心となり医療・介護・保健分野など関係機関に対して情報提供をしたり、意見交換の場を提供しています。
また、地域における関係機関とケアマネジャー、在宅サービスの連携を支援したり、ケアマネジャー同士のネットワークの構築を支援したりする役割も担っています。
- 地域の実情にそって各専門家が意見交換をする(地域ケア会議の開催)
- ケアマネジャーの個別相談、アドバイス
- 支援が困難なケースへの指導、アドバイス
- 自立支援のためのケアマネジメント指導
などを行っています。
高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、地域に属するケアマネジャーや各分野の専門職種同士のつながりを作り、情報交換ができるしくみづくりを行っています。
権利擁護
高齢者の方が安心して生活できるように、その方が持つさまざまな権利を守ります。
1人暮らしの高齢者、認知症などで判断力の低下して金銭管理が難しくなった高齢者が詐欺グループに狙われ被害にあうケースが多く報告されています。
そのような高齢者の財産や人権を守るために成年後見制度の活用をサポートする役割を担っています。
また、核家族化が進んだ現代では、老老介護や独身の子による親の介護など閉鎖的な環境で介護をしているケースも少なくありません。
介護によるストレスは介護ネグレクトや虐待、無理心中など深刻な事件を引き起こす恐れがあります。
問題が早期に発見できるように情報を集め、虐待被害の対応や防止に努めています。
事例でみる活用方法⠀
地域包括支援センターの活用事例を2つご紹介します。
身内に限らず、似たような状況に心当たりがあるという方は地域包括支援センターに相談してみましょう。
ご近所さんの気になる行動を相談
Aさんはある日買い物の途中で近所に住むBさん(85歳女性)が道端で座り込んでいるのを見つけました。
Bさんは買い物の帰りだと言いましたが、昼間なのにパジャマ姿でした。
違和感を感じたAさんは、Bさんを家まで送り届けました。
しかし、玄関からみえた部屋は掃除が行き届いておらず、散らかった状態でした。
Aさんは地域包括支援センターにBさんの様子を相談しました。
後日職員が訪問し現状を把握します。
Bさんは夫を亡くしてから1人暮らし。
膝の痛みや物忘れが出てきており、身の回りのことがうまくできずにいました。
地域包括支援センターの介入で家族に連絡、介護保険申請を行いました。
その後、ヘルパーやデイサービスを利用し自宅での生活を続けることができています。
認知症により金銭管理ができず…
Cさん(80歳女性)は軽度の認知症がありますが頼れる身内がなく、介護ヘルパーを利用しながら1人暮らしをしていました。
ある日、Cさんの担当ヘルパーから相談があり、Cさんの友人だという男性が頻繁にCさんの部屋に出入りしているとのことでした。
その男性は言葉巧みにCさんに言い寄っては、お金を借りているようだと報告があったのです。
地域包括支援センターが介入し、成年後見人をたてCさんの財産管理をしてもらうことになりました。
その後、ケアマネジャーやヘルパーと連携しながら、Cさんには必要な時に必要な金額を成年後見人から渡してもらうことになりました。
まとめ
地域包括支援センターの4つの役割について解説しました。
- 総合相談支援
- 介護予防ケアマネジメント
- 包括的・継続的ケアマネジメント
- 権利擁護
高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるような仕組み作りを担う地域包括支援センター。
本人・家族だけではなく地域住民からの情報、サービスに関わる専門職からの相談にも幅広く対応しています。
困ったことはまず相談することが、介護予防につながり介護の負担を減らす一歩になります。
皆さんもぜひ活用してみてください。