在宅で暮らす高齢者が注意したい「低栄養」について

在宅で暮らす高齢者が注意したい「低栄養」について

「いつも食事を残してしまう」
「あまり食べたがらない」
「最近痩せてきたみたい」

高齢者の在宅生活でよく問題になるのが食欲の低下です。
このような状況が続くとご家族も心配になってしまいますよね。

今回は、在宅で生活する高齢者が陥りやすい「低栄養」について、症状の概要や原因、予防と対策についてご紹介します。

ご家族の中で少しでも不安をお持ちの方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

低栄養とはどのような状態なの?

低栄養とはどのような状態?

低栄養とは、体に必要なエネルギーやタンパク質が欠乏した状態のことをいいます。健康な体を維持できなくなり病気や体調不良を引き起こしてしまうなど、高齢者が陥りやすい症状のひとつです。

人の身体はタンパク質、脂質、糖質(炭水化物)がバランスよく摂取されていることで健康を維持できます。
しかし、これらの栄養素を十分に摂取できていないと、体に様々な症状を引き起こしてしまいます。

低栄養には

  • たんぱく質とエネルギー(脂質と糖質)の両方が不足した状態
  • エネルギーは足りているがたんぱく質が不足している状態

の2つのパターンがあります。

前者は見た目が痩せてきますが、後者はそれほど痩せているようにはみえません。しかし、むくみや脂肪肝(だるさ、疲れやすい)などの症状がでやすくなります。
実際には、両者を合併した状態が最も多いといわれています。

全体的な食事量の減少だけでなく、調理が簡単で食べやすい麺類やおかゆ、白米とお漬物のみ、パンなどで済ましてしまうといった食事パターンも注意が必要です。

低栄養が体に及ぼす影響とは?

低栄養によって、以下のような症状が表れます。

  • 筋力の低下
  • 体重の減少
  • 足にむくみがでる
  • 免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすい
  • 傷や床ずれ(褥瘡)が治りにくい
  • 活気がなくなる
  • 抜け毛が多くなる

これに加えて、食事量が減ると同時に水分摂取量も減ってしまい、脱水症状がみられるケースもあります。
「食事量が減ったな・・」と思った時は、身体の異変に十分に気をつけなければいけません。

低栄養になってしまう原因とは?

低栄養になってしまう原因とは?

食欲がなくなってしまう原因として、身体面だけでなく、精神面や社会的な原因も大きく関係しています。
例えば仲の良い友人と一緒におしゃべりをしながら食べる食事と、1人で食べる食事はどちらが美味しくたくさん食べられるでしょうか?
家族の為に作る食事と自分の為だけに作る食事では、どちらが栄養面や手間をかけて準備するでしょうか?

実際には様々な要因が複雑に絡みあって低栄養に繋がってしまう恐れがあるのです。

身体的な要因

  • 加齢による味覚の低下
  • 入れ歯や歯が少なくなることによる咀嚼機能の低下
  • 飲み込む力が弱くなる嚥下能力の低下

食事に時間がかかると食べられる量が減ってしまい、さらに栄養が足りなくなるという悪循環が生まれます。
食材を小さくカットしたり、じっくりと火を通したりして食事の内容を工夫してみましょう。

精神的な要因

  • 認知機能の低下
  • 病気や加齢に伴う意欲の低下、うつによるもの

ストレスや不安を抱えていると、食事もなかなか進みません。好きなものだけを食べてしまい栄養バランスが偏ってしまう可能性があります。
まずは会話を増やしたり、ご家族で食卓を囲む頻度を増やしたりしましょう。

社会的な要因

  • 高齢者夫婦のみの世帯や1人暮らし
  • 引きこもり、孤立
  • 貧困などの経済状況

1人きりでは食が進みにくく、栄養も偏ってしまいます。
まずは食事を楽しむ環境づくりから始めましょう。

ご家族と一緒に、あるいはデイサービスの利用や地域公民館などで開催されている会食会に参加するなど、環境を少し変えることで食事の楽しみが増えるかもしれません。

お家でもできる栄養チェック

お家でもできる栄養チェック
  • BMI(体格指数)が20以下
  • 6か月の間に体重が2~3㎏、もしくはそれ以上減少している
  • 食事量が減少している
  • 消化器系(食道、胃、腸)に問題がある
  • 義歯や歯の問題、飲み込みに問題がある
  • 体力や筋力が低下している
  • 外出しなくなくなった
  • 認知症がある

※BMIは体重(㎏)÷身長(m)×身長(m)で算出することができます。
気になる症状がある場合は主治医に相談して検査をしてもらいましょう。

低栄養にならないために予防策と改善策

低栄養にならないためには一日3食、バランスの良い食事をとることが大切です。場合によっては、配食サービスやヘルパーを利用するのも良いでしょう。
どうしても食欲が出ないときは、栄養補助食品を利用するのもひとつの手です。

無理はせずできることから始めてみましょう。

一日3食きちんと食べる

食欲がないからと食事を抜いてしまうと、一日に必要な栄養が十分に摂取できません。
一日3食決まった時間に食べることで、生活リズムも整えることが出来ます。また、食事摂取の機会を増やすことで、食欲の増進や規則的な排便を促すこともできます。
食事量は気にしなくとも、決まった時間に食事をとって規則正しい生活リズムをつくるところから始めましょう。

主食+主菜+副菜をバランスよく摂取する

低栄養にならないために予防策と改善策

ごはん、麺類などの主食。肉・魚・卵・大豆などのたんぱく質を含む主菜に加えて、野菜・キノコ・海藻などの副菜を組み合わせて食べるようにしましょう。

くれぐれも菓子パンのみ、うどんのみといった単品メニューにならないようにしましょう。

惣菜や配食サービスやヘルパーを利用する

身体の調子があまり良くないと、食事の準備すらおっくうになってしまうこともあると思います。
そんな時はスーパーやコンビニの惣菜を利用しましょう。

「自分では買い物や食事の準備が難しい」「家族も十分に関わる事ができない」
そんな場合には、ケアマネジャーやヘルパー、配食サービスなどが利用可能か相談してみるとよいでしょう。

ヘルパーを利用すれば買い物をしてもらったり、食事の準備をしてもらったりすることができます。
また、配食サービスについては、安否確認も兼ねて栄養バランスのとれたお弁当を直接届けてくれるサービスです。

こういったサービスを利用することで、人と関わる機会が増え、相談しやすい環境も整えることができるのです。

栄養補助食品を利用してみる

どうしても食欲が出ない、食べる量が少ない時は主治医に相談してみましょう。

医師の指示で処方してもらえる栄養剤や食品メーカーが販売している栄養調整食品などがあります。

これらは少ない量で栄養が摂取できるように作られています。

まとめ

食べる事は人間が生きていく上で欠かせない欲求のひとつです。
しかし、高齢者は様々な要因で栄養状態が悪化してしまう恐れがあります。

特に夫婦2人や1人で生活している高齢者は人との関りが減ってしまうことも多く、低栄養に陥りやすいので注意が必要です。

いつでも相談できる環境づくりや定期的に家族で食卓を囲むことで、低栄養の予防や早期発見につながります。