【事例あり】在宅で看取りを行うために考えたい2つのこと

【事例あり】在宅で看取りを行うために考えたい2つのこと

あなたがもし人生の最期をどこで迎えたいかと聞かれたら、どこだと答えますか?
「住み慣れた自宅」
「家族に囲まれて」
「仲の良い友人やパートナーに看取られながら」
それぞれが思い描く理想の形があると思います。
在宅で人生の最期を迎えるためには、本人や家族にどのような準備・心構えが必要なのでしょうか?

昨今では高齢化社会による医療費の圧迫を少しでも軽減しようと、在宅医療体制を整備していく取り組みが進んでいます。在宅での看取りを行うためには医療・介護の専門家がチームを組んで、家族と協力しながら行う必要があるのです。

そこで今回は、看取りの概要をはじめ、在宅で最期を迎えるために考えたいことや準備するものをご紹介します。合わせて、在宅での看取りを行うメリットとデメリット、実際に在宅で看取りを行った事例もご紹介しています。
人生の最期を在宅で迎えたいと思う方は、ぜひ参考にしてみてください。

看取り(みとり)とは

看取りとは?

「看取り」とは、近い将来、死が避けられないとされた人に対して、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援することです。

平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査(厚労省)」では、約7割の国民が自宅での最期を迎えたいと望んでいることがわかりました。
多くの人々が自宅の看取りを望んでいるのに対して、病院での看取りが大半を占めるのはなぜでしょうか?

実は1950年代までは自宅で看取ることが一般的でした。
しかし、核家族化や医療の発展が進み、1975年頃を境に病院で人生の最期を迎える人が増加。現在では8割の方が病院で看取られ、在宅での看取りは2割にも満たない状況となっています。

病院での看取りを選択する理由として

  • 本人が急変した時にどう対処すればよいのかわからない
  • 急変時に落ち着いて対応できる自信がない
  • 自宅での看取りを望んでいるが、家族には迷惑をかけたくない
  • 子供と離れて暮らしている、独居、老老介護で介護力が不足している

といったことがあげられます。自宅で最期を迎えたいと考えながらも、本人・家族の双方に不安が大きいことがわかります。

在宅で看取りを行うために考えたいこと

在宅で看取りを行うために考えたいこと

それでは、在宅で看取りを行うためにはどのようなことを考えておかなければならないのでしょうか?

本人と家族に在宅で最期を迎えたいという意思と覚悟がある

人生の最終期について話すことをタブー視せず、日常会話の中で気軽に話し合ってみましょう。そうすることで判断を迫られた家族が、本人の意思を尊重して決断をすることができるのです。

病状が進んでいても本人と意思の疎通がとれる状態であれば希望を聞くことができます。
しかし、認知症や高齢に伴う疾患、急変時には意思の疎通が取れなかったり、明確な最期を見極める事が困難になります。

本人との意思の疎通が取れないときに重大な判断をゆだねられると「本人は本当にこんなことを望んでいるのだろうか?」と家族は悩むことになります。

そこで、元気で判断力のあるうちに、本人と家族の間で人生の最期をどのように過ごしたいか、延命治療は望むかなど話し合っておくことが大切です。

家族や介護サービスによる介護力があること

在宅で療養するとなると24時間365日の介護が必要になります。老老介護やワンオペ介護の状態では介護者にとって大きな負担となってしまいます。
介護力が不十分な場合は介護サービスなどを利用し、家族と介護医療のスタッフがチームとなって在宅療養を支える体制が必要です。

在宅で看取りを行うための準備

在宅で看取りを行うための準備

介護保険の対象であれば、ケアマネジャーと契約して介護認定を受ける必要があります。
既に介護認定を受けている人は、現在受けている介護度の判定が今の状態に対して適切かどうかを判断してもらいましょう。また、在宅での看取りを考えていきたい場合は、ケアマネジャーに相談して在宅医や訪問看護などの医療体制を整え、24時間体制で医療と介護が受けられるようにすることが大切です。
本人や家族の状態に応じて、在宅医、在宅歯科医、歯科衛生士、薬剤師、訪問看護師、理学療法士、作業療法士、ヘルパーなどが訪問し、サービスを提供します。

在宅で提供される医療サービスは医療保険の適用となり、訪問看護は疾患名によって医療保険もしくは介護保険が適用されます。

在宅での看取りを行うメリットとデメリット

在宅で看取りを行うメリットとデメリットについて、ポイントをまとめてみました。

在宅で看取りを行うメリット

在宅で看取りを行うメリットとして、以下の6つがあげられます。

  • 本人の意思を尊重できる
  • 住み慣れた自宅で家族と共に過ごしながら最期を迎えられる
  • 自宅は生活の場であり自分が思うように過ごすことが出来る
  • 自宅では自分のペースで自由に過ごすことができる
  • 食べ物や嗜好品など、好きな事をして過ごすことが出来る
  • 経済的な負担を軽減させることができる

在宅での看取りは「本人の意思を尊重できる」という大きなメリットがあります。その上で、住み慣れた自宅で家族と共に過ごしながら生活ができるため、不安やストレスも抱えにくくなります。

在宅で看取りを行うデメリット

在宅で看取りを行うデメリットとして、以下の5つがあげられます。

  • 24時間365日の介護となってしまうため、家族への負担が大きくなる
  • 病状が長引けば長期的な介護になる可能性も家族の身体的、精神的な疲労が心配される
  • ケアを行う家族も介護技術や病状に関しての知識を学ぶ必要がある
  • 病状に合った食事の準備やケアをしなくてはならない
  • 刻一刻と変化していく状況を見守る家族の精神的、身体的負担が大きい

慣れないケアをしながら見守る家族にとっては、心身の負担がとても大きいことがわかります。
家族の不安を軽減できるように、各医療介護の専門職種がチームを組んで相談しやすい環境を作り、介護者を孤独にさせないことが大切です。

事例紹介

在宅での看取りの事例紹介

本人の意思を尊重し最期を自宅で過ごしたAさん。
Aさん(90歳)は日頃から「最期は自宅で迎えたい、病院には行きたくない」と同居する娘さん夫婦や近くに住むお孫さんに話しをしていました。
そんなある日、Aさんは風邪を引いたことがきっかけで食事がとれなくなってしまいました。病院を受診すると、全身にがんの転移がみられたのです。

一時は入院をしたAさん。しかし、家族は「自宅で最期を迎えたい」と話していたAさんの意思を尊重し、在宅療養をして看取りを行うことに決めたのです。Aさんは訪問診療と訪問看護のサービスを受けながら、自宅での生活を続けていきました。

娘さんは「自分が仕事に出ているうちにAさんに何かあると不安だから」と退職を考えていました。その一方で、Aさんは「仕事は続けてほしい」と考えていたため、介護保険を申請。ヘルパーの訪問も定期的に受けることにしました。

2か月後、Aさんは自宅でご家族に看取られて旅立ちました。日頃から最期について話し合っていたので、ご家族も迷うことなく判断ができました。
Aさんの意思を尊重できて本当によかったと話してくれました。

まとめ

今回は在宅で看取りについてご紹介しました。

在宅医、訪問看護を中心に在宅療養を支えるサービスを活用して、住み慣れた自宅で最期を迎えることも可能です。

まずは日頃から家族と人生の最期について考え、話し合ってみましょう。