在宅介護の良い所は、住み慣れた自宅で過ごせるということ。1人暮らしや高齢夫婦だけの世帯では何かと心配がつきものだからです。ただ、24時間家族が付き添うのは負担も大きく大変です。
「デイサービス」などの通いで受けられるサービスを利用するのも一つの手ですが、本人がすんなりと受け入れてくれるとも限りません。なかには、デイサービスに行くことを嫌がって毎回送り出すのに一苦労…というケースもみられます。
そこで今回は、デイサービスを拒否してしまうケースについての原因と対策についてお伝えします。
在宅介護でデイサービスに通うメリット
自宅から日帰りで通うサービスには大きく2種類のサービスがあります
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
主に半日~1日の時間を施設で過ごします。
レクリエーションや機能訓練、体操や脳トレをして身体と頭を動かします。
1日を通して通うデイサービスでは、入浴や食事などのサービスを受けることもできます。
あらゆる活動を通してスタッフや利用者同士と交流することによって、引きこもりを予防することができます。
また、介護を担っている家族は、利用者がデイサービスに通っている間に自分の時間を作ることができるので、介護負担の軽減にも繋がります。
しかし、家を離れて慣れない場所へ行くというのは不安を感じやすく、拒否という形であらわれることもあるのです。
そういった場合はどうすればよいのでしょうか?
【事例検討】「行きたくない!」デイサービスを拒否されたら?
80歳でひとり暮らしをしているAさんは軽度の認知症と診断されています。Aさんの介護を担うのは、車で5分のところに住む娘さん。
しかし、娘さん自身にも家族がいますので、Aさんにかかりっきりになるわけにはいきません。
元々控えめでおとなしいAさんは、徐々に引きこもりがちになっていました。
娘さんは話し相手ができれば楽しみもできるだろうと、大人数で活気のあるデイサービスを選びAさんに通ってもらうことにしたのです。
しかし、数回利用したAさんが突然「やっぱり行きたくない!」と拒否するようになってしまいました。
デイサービスを拒否するときに考えられる原因
デイサービスを行きたがらない場合は、決して無理強いをせず行きたくないという気持ちを受け入れるようにしましょう。
「認知症だから…」
「わがままだから…」
と決めつけず、本人の頭の中を想像してみることから始めます。
まずは、本人を変えるのではなく、本人に合った環境を周囲の人が選択することが大切なのです。
では、Aさんはなぜデイサービスを拒否するようになったのでしょうか?よくみられる原因と対策について解説していきます。
そもそもデイサービスが何かわからない
はじめにデイサービスが具体的にどういうところなのか知ってもらう必要があります。
言葉で説明するよりも写真や動画などの方が伝わりやすいでしょう。
また、パンフレットを見せたり、本人と一緒に実際の施設を見学に行ってみたりするのも良い方法です。
本人の気持ちに耳を傾けてから理由を探る
本人の気持ちになって考え、話を聞いて理由を探ってみましょう。
認知症や病気などの影響でうまく言葉で理由を説明できなかったり、自尊心や周囲への気遣いから気持ちを素直に打ち明けられなかったりすることがあるからです。
もしかしたら家族にも言いづらい理由があるのかもしれません。
また、デイサービスとは直接関係のないサービスの担当者に、さりげなく聞いてもらうのもよい方法です。
本人のニーズや趣味嗜好に合っていない
- 創作活動が好きではないのに、創作活動の多いデイサービスに行っている
- 黙々と運動したいのにおしゃべりの時間が多い
など本人のやりたい活動と合っていない場合に拒否につながるケースがあります。
本人が大切にしてきた習慣や得意なこと、趣味、嗜好など生かせる場所かどうかをもう一度確認してみましょう。
例えば手芸、野菜作り、習字、麻雀、将棋、囲碁など、長年続けてきた趣味はありませんか?
デイサービスによってはレクリエーションとして色々な創作活動、ゲームや対局を行っているところもあります。
ケアマネージャーに本人の趣味嗜好を伝えて、本人に合いそうなデイサービスを再度探してもらうと良いでしょう。
「囲碁が得意な人がいるらしいから、お手合わせしてみれば?」
「お母さんみたいに習字の経験がある人を探してたらしいよ!」
という風に具体的な活動や本人の得意分野を生かせる施設を選んで、誘ってみるとよいでしょう。
人間関係のトラブルはないか?
人が集まれば色んなことが起こります。よくあるのが利用者同士の些細な人間関係のトラブルから利用を拒否するケースです。
実際にあった理由としては、
- 隣の人と気が合わない
- 好意をよせられてしつこく連絡先をきかれている
- 一方的に自慢話をされて気疲れをしている
- 難聴で話の内容が聞き取れず、うまく会話ができない
外からみればうまくコミュニケーションをとっているように見えても、本人にとってはストレスになっている場合があります。
人間関係のトラブルは打ち明けるのに勇気がいるため、素直に話すことができずデイサービスを拒否するという形で表れる場合があります。
こういったケースでは席替えをする、曜日や通所時間を変更するなどの対応で解決することもあります。
デイサービスに通ってもらうために私達ができること
では一体、どのような対策をすれば快くデイサービスに通ってくれるようになるのでしょうか?
本人の性格を考慮したデイサービスを選ぶ
繰り返しになりますが、本人の性格を考慮してデイサービスを選択することが大切です。
人の性格は大まかに分けると「外向的」と「内向的」の2種類のタイプがいるといわれています。
外向的な性格の人は、人がたくさんいる賑やかな場所が好きで、色んな人と話すことで活力を得るタイプです。そのため、デイサービスのような集団で過ごす場所には比較的なじみやすい方が多い印象です。
その一方で内向的な性格の人は、1人で過ごす時間を大切にしており、大勢の人の中で長く過ごしていると疲れてしまいます。すなわち、人が多い場所に苦手意識があるので、デイサービスに行くことに難色を示す傾向にあります。
「引きこもられるのが心配だけど、本人が内向的なタイプかも…」
といった場合は以下のようなデイサービスを探してみるとよいでしょう。
- 少人数制
- おしゃべりの時間がなく黙々と運動や活動に取り組める
- 個人でくつろげるスペースがある
- 本人のペースを尊重してくれる
こういったデイサービスは本人のペースを配慮してくれるところが多くあるため、内向的な性格の人でも難色を示すことも少なくなるはずです。
家族のために行ってもらうようお願いする
在宅介護というものは「24時間365日休みなく」続きます。つまり、介護者自身も自分の時間がとれず、心身ともに負担が大きいものなのです。
- 介護から離れて休息する時間が欲しい
- 自分にも生活がある、やりたいことがある
こういったことを、本人に素直に伝えてもよいと思います。
デイサービスに通っている方の中には「家族にも休憩が必要だから」という理由で来ている方も少なくありません。介護される側である本人も同じように家族の健康としあわせを願っているはずです。
上手に甘えてお願いしてみましょう。
通所系がダメなら訪問系サービスから慣れてみる
それでも、中にはデイサービスのような通いのサービスが受け入れられないという方はいます。
引きこもりによる体力の低下が心配な場合は、訪問リハビリなど自宅で運動の指導を受けられるサービスを利用するのもひとつの方法です。
1:1での信頼関係を築くことができれば、そこから他のサービスに繋がっていくことも珍しくありません。
内向的な性格だったAさんはどう対処したのか
Aさんは内向的な性格で人が大勢いるところが苦手だったのです。
しかも、苦手な噂好きのご近所さんも同じデイサービスだったようで、根掘り葉掘り色んなことを聞かれて困っていたのだとか。
Aさんの家族はケアマネジャーに相談し、少人数でAさんのペースに合わせて運動や創作活動が行えるデイサービスを紹介してもらい、今は楽しんで通われています。
介護は1人で抱え込まず他者の手を借りる
親の介護は、他人に頼らず自分ですべきだと考えている人も少なくないでしょう。
しかし、介護を1人で抱えるには負担が大きすぎます。
サービスを利用して他者の手を借りることで見守る目も増えていきます。介護サービスを提供している専門職はあらゆる困難なケースを経験しています。
また、なにか問題が起きても、ケアマネジャーを中心にそれぞれ各サービスの専門家が知恵を出し合って他の案を考えることもできます。
困った時は決して1人で抱え込まず、相談するようにしましょう。
デイサービスを嫌がるのには必ず原因がある
デイサービスに通うことを拒否するケースでは、どのようなサービスなのか理解ができず不安になっていたり、周囲への気遣いから本心を隠していたりする場合があります。
本人の思いや気持ちに耳を傾け、趣味や嗜好、性格を考慮したデイサービス選びをしてみましょう。
介護で困ったことや問題が起きた時は、1人で抱え込まずケアマネジャーや他のサービスのスタッフの協力を得ながら対策を考えていくことが大切です。