「介護に笑顔を」、エガプロ代表 高岡秀明氏に活動の原点についてインタビューしました【前編】

「介護に笑顔を」、エガプロ代表 高岡秀明氏に活動の原点についてインタビューしました【前編】

高齢化の進む日本。少子化も追い打ちをかけ、約15年後の2035年には約3人に1人が高齢者という予測がされています。誰もが身近になる「介護」という課題に対し、独自の啓蒙活動を行っている方々にPoly(ポリー)がインタビューします。

今回お話を伺うのは、今年(2019年)2月に3周年を迎えた「笑顔をつなぐプラットホーム」egaoプロジェクト(エガプロ)代表、高岡秀明さんです。
3周年記念のパーティでは約170名が参加、大阪でも最大級の介護系コミュニティです。
前編では、高岡氏が介護業界に関わるようになったきっかけや失敗/成功談、介護観、周りを巻き込む力の源泉について語っていただきました。

プロフィール

高岡秀明
egaoプロジェクト代表
一般社団法人 全国コンシェルジュ連盟 代表理事
日本食支援協会 代表世話人
合同会社 Le’coeur代表 介護コンシェルジュ

南海福祉専門学校 社会福祉科卒業。
1995年社会福祉法人でキャリアをスタート、働きながら当時の制度や社会福祉法人の不正と戦った。不正を指摘した際に所以のない理由で解雇される。

家族会・職員・関係者たちが解雇に対して撤回を求める署名活動により復職。
不正を行った関係者は逮捕に至った。
その後、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなど施設長として複数立ち上げた。

2016年、南大阪から全国に「介護の未来づくり」と「笑顔が生まれる人のつながり」をつくるegaoプロジェクトを設立。
笑顔をつなぐプラットホームを理念とし、南大阪を起点に全国へ「介護に笑顔」を発信している。

きっかけは親族の集まりで経験した「なんじゃそれ」

高岡秀明氏考える1

Poly:
様々な介護に関わる活動をされている高岡さんですが、そもそもなぜ介護業界に入ろうと思ったのでしょうか?

高岡氏:
もともとそこまで興味はなかったんです。
全然違う職業につこうと思っていて、たまたま親戚に介護が必要な方が出た。
お正月に親族が集まるんですが、介護が理由で親戚家族が集まれなかった。
なぜ集まれないかというと、当時の制度の中でショートステイの利用日数が決まっていたんです。
「なんじゃそれ」と
肝心なときに必要なサービスが利用できないという現実を知り、
そこから福祉の業界に興味を持ちました。

Poly:
かなり若い時から絞っていたんですね。

高岡氏:
なので高3くらいの時からですね。
大学で福祉と経済/経営の両輪で行こうと思ったけど、英語だけがとてつもなくできなくて(数カ所から)足切りという門前払いに笑
働こうかなと思っていたときに、たまたま専門学校を薦められて、
みんなより1年遅れて専門学校に入りました。
いざ学校に入って制度や現状を知り、ますます「なんじゃこれ」ってなったんです。
その後社会福祉法人に就職しました。

行政/制度との戦い

高岡氏:
偉くなりたいという気はなかったけど、自分の意見を最短で通したい。
承認のバケツリレーを減らすために役職を上げるしかないと努力し、生活相談員から7年ほどで施設長まで役職が上がりました。

平成10年に開設した特養では、緊急ショート(高齢者を介護している家族が急用により介護ができなくなった場合に一時的に施設で介護すること)というのを始めたんです。
今、富田林市では市の条例ができたので普通なんですけどね。

ただ、当時は行政からバッシングを受けた。
16時くらいに電話を入れると「17時までしか役所は動けない、必要な書類が作れないのでできません」と言われた。

そこで、強制的にいけるようにしちゃったんです。

Poly:
どうやってですか??

高岡氏:
じゃーお金はいりませんって言いました

Poly編集部一同:
おー

高岡氏:
行政が動かないなら自分たちで動く、困った人が居てたら出来ることだけでもする。
どうしてもできない時は自分たちで医療系などにお願いしに行きました。
当時の老人福祉法では、そこまでする必要はないと指摘されたんですが、その時の大義は社会福祉法人なので社会福祉法にのっとって動く。と
屁理屈ばかり言ってました笑

緊急対応の経験と現在の制度

高岡秀明氏インタビュー1

高岡氏:
他にも過去に千早赤阪村を台風が直撃して、山の杉林が軒並み倒れてしまったことがあったんです。
そんな状況なので、利用者さんの家も植木が倒れたり窓が割れたり、大変でした。
なので派遣しているヘルパーからヘルプ依頼があり、スタッフ数人で利用者さん宅へ救助に行きました。
一段落して帰ってきたらまさかの行政からクレームの連絡が入ってて「自分ところだけなんで動いてるん?」「サービスの回数決められてるのになんでそんな勝手なことするん?」と言われました
「認知症の一人ぐらしで、窓が割れていてパニクってるのに放置するってどうゆうことやねん!!!」と意見したのですが、行政からは「制度で決まっているので」と回答されました。
だから行政に「じゃあ対応よろしく」と依頼したら無理ですと。

他にもヘルプ依頼があったので「うちの利用者さんはうちの社会福祉法人の職員で行きますわ。」
と言って引き続き数人で救助に向かいました。

Poly:
すごいですね…
話を伺っているとかなり厳しい制限のようですが、現在はどうなっているのでしょうか?

高岡氏:
かなりゆるくなっています。
介護保険法に抵触しないものは、介護保険料を請求するかしないかなので、請求しなければ指摘を受けることはないですね。
緊急避難は今のほうが全然やりやすい。

Poly:
なるほど、その制度については見直されているのですね。

ターニングポイントは署名活動

高岡秀明氏1

高岡氏:
不正を指摘してクビになったとき、署名活動が起きたことで自分がなんてちっさいんだろと気づいた。

いつもいいこと言ってる人達と、文句をいうけどなぜかいる人。
前者はそうゆうときに消えちゃう、文句言ってけどなぜかいる人は、指摘をしてくれてるんですよね。
当時は若く、好き嫌いで判断してしまうから気づかない。
実際、署名活動でお願いした先に断られたのに、後者のメンバーが色々なところで500人の署名を集めてくれた。
そうゆう人達が色々なところで集めてくれて、3万8千もの署名が1ヶ月半で集まった。

僕一人の復職のために、これだけ大勢の人が動いてくれた。
普通書かないですよね笑

人に支えられているということにそこで初めて知りましたね。
その人達に恩を返さないと、と思いました。

ややこしいところは全部遮断して、やりたいことだけやろうと
毎日今日で終わっていいやという気持ちでやっています。

Poly:
これまでの活動から考えて、そのような署名活動につながるとは思ってましたか??

高岡氏:
思ってなかったですね。
ただやりたいことをやってるだけ
「入居してる方がおもろかったらええやん」と

当時特養の生活相談員だったので、キーワードとして「入居してる間に家族と利用者の絆を戻す」というのをやっていました。
今でこそ特養の入居の仕方は変わりましたが、昔は姥捨て山みたいなイメージだった
入居者は捨てられた、家族はもうええねんという状況で入ってくる。
僕たちはそこがスタートなんです。

実際色々な話をしていると、利用者は子供や孫のことを昔こんな風に思っててん、その時こう思ってんみたいな話をする。
これは認知症になっても覚えてるんです

僕たちはそういった利用者の思いを心から聴き、家族にその想いを伝える。。
家族は「そんなことを思ってくれてたんや」と思う。そうすると疎遠になってる家族をイベントなどに呼べるし、来てくれる。
そんなことを続けた結果動いてくれたのかもしれない。

強みは行動力??

Poly:
高岡さんが突っ走っても周りの人が協力してくれる理由ってなんなんでしょうか?

高岡氏:
なんでしょう?
実は一度facebookに投稿したことがあるんです。僕の強みを教えてと笑
それをやった瞬間みんなに病んでるんですかと笑
病んでないから笑

2日後に大勢の前でプレゼンを行う機会があり、僕の強みが何か知りたかったんです
その時は「行動力」が大半を占めました。
なんかあった時に動いてくれると

Poly:
行動力がある人って惹かれますよね。ワンピースのルフィ的な存在ってことでしょうか?

高岡氏:
いや〜
多分ね、一番バカなんですよ
自覚症状あるんですけど
頭で考えることが苦手なので笑

Poly:
行動力の裏には、何かあった時に助けてくれる安心感があるんじゃないかなと
だから人が集まるんじゃないかな〜なんて
あと意見に対して否定をしないのも安心感につながるのかなと

高岡氏:
何か欲しいんですか笑

一同:

まとめ

 前編では、高岡氏の介護観や周りを巻き込む力の源泉についてお伺いしました。
介護に関わるようになったきっかけから、常に利用者さんに対して向きあい続けることを実践してきた高岡氏。
周りを動かす原動力は、そのブレない行動力にあるのかなと感じずにはいられませんでした。

 後編では、南大阪発の介護系コミュニティ、egaoプロジェクトがどのようにしてはじまり、少しずつ規模を拡大するに至ったのか
これからのegaoプロジェクトについて、考えをお話頂きます。

後編は来週公開予定ですお楽しみに!!
(※2019/5/22(水)、後編公開致しました)

関連リンク

le’coeur
egaoプロジェクト