高齢化の進む日本。少子化も追い打ちをかけ、約15年後の2035年には約3人に1人が高齢者という予測がされています。誰もが身近になる「介護」という課題に対し、独自の啓蒙活動を行っている方々にPoly(ポリー)がインタビューします。
お話を伺うのは、今年(2019年)2月に3周年を迎えた「笑顔をつなぐプラットホーム」egaoプロジェクト(エガプロ)代表、高岡秀明さんです。
3周年記念のパーティでは約170名が参加、大阪でも最大級の介護系コミュニティです。
後編では、高岡氏が考えるチームワークと代表を務めるエガプロの初期、今後について語っていただきました。
またこちらの記事はインタビュー【後編】の記事になります
前編では高岡氏の活動の原点についてインタビューを行っているので、そちらもぜひ御覧ください。
チームをまとめる
Poly:
チームをまとめる上で高岡氏が大事にしていることを教えてください。
高岡氏:
個人的には「モノゴトが起きた時に上位が決まる」と考えています
例えば、おむつ交換が必要な時に事務員と介護職どっちがうまくできるかということです
普通に考えたら介護職ですよね。
利用者さんが怪我しました。手当は誰がしますか?
看護師か医者です。
年金の手続きをしましょう。誰がしますか?
生活相談員です。
自分の中ではゆるがないルールですね。
Poly:
階層のある組織ではなくフラットなチームで、というのが最近言われ始めてますが、その中でもモノゴトベースで柔軟に優位が決まるのが大切だということですね
高岡氏:
そうそう
周りの環境がある意味よかったんです。
ありえへん環境、通常じゃ経験せえへんようなことが一回だけではなく軒並み続きく
僕は関わってるスタッフに恵まれていました。
僕はいつも部下に育てられたと言っています。
そもそも僕は関わってきた上司が少なくて、なりたい上司像がない。
部下に面白い人を見つけると興味津津笑
「なんでそんなことできるんやろ」ってなる。
エガプロも同じなんですけど、人の面白いところをみつけて、その人の良いところを伸ばせるとすごく面白い
エガプロを立ち上げたきっかけは、過去の経験と憤(いきどお)り
Poly:
エガプロを立ち上げるきっかけは、人と人をつなげるという部分からでしょうか?
高岡氏:
そうですね、過去の流れもです。
あと、ええ人たちが職場をなんで辞めるんだという憤りがありましたね。
以前、法人内でお客様を大切にするという想いのある人達だけを残そうと、2005年に改革を行ったんです。
その時のベタな改革名はクール計画(笑)
教訓は
①cool: 感情的ではなく冷静に
②coeur: (フランス語で心)心を大切に
です。
(その教訓を忘れないように現在高岡さんが経営する会社の社名Le’coeurになります)
改革後、離職率が激減しました。
改革時は特養で53%が辞職という結果になったが、在宅系は誰も辞めませんでした。
残った人達の声掛けで人が集まると、想いがあるから職場も楽しくなる、どんどんやりたいことが生まれる、結果離職も減りました。
翌年の離職率は3%です
想いのすれ違いによって居心地が悪くなる現象は、実はどの施設でも陥っている。
隣の芝生は青く見えるけど、結局異動したら同じことが繰り返される。
面白い人達が辞めないようにすればどうすればいいか?
自分の法人だけ頑張ってもたかがしれてるし
そこで、「地域まるごと変えたらいいやん」ということで始まった
自分たちが将来介護が必要な時、子どもたちに同じ状況を引き継ぐのか
これまで20年間介護業界のためにやってきた自信はあります。
でも、20年間ですごく良くなった!と言える自信はないんです。
変わらないものもありました。
同じ20年繰り返しても変わらないでしょ
一部で改革をやるよりも地域で全員が全員まるごと変えてしまったら、全体的に底上げになるだけではなくどこに行っても同じ環境になる
そうすると離職は減ります。
いい人がどんどん育ち、その人達に育てられるともっといい人になるやんと
とにかく、ええ人達がつながり楽しい環境を作るんやと
あと、過去新卒1000人を集める法人で働いたんですが、実際に集めることができた経験がありました。
約50床だけある有料老人ホームで社長20代で新卒1000人集めるって意味不明でしょ
ただ、実際に新卒1000人が集まり、2次面接が始まっても100人くらい残ってる
履歴書を見れば超エリート級の子達でした。
「これだけ絞ってこの人数がいるなら、まだまだ人材は居てる!」と確信した時に、エガプロで副代表をしてる山下さんに出会いました。
それが最大のきっかけですね
飲み会から偶然つながった想い
Poly:
山下さんとの出会いは、どうゆう?
高岡氏:
前職の職場の内覧会でした
その時山下さんが来てたんです
スタッフが「2Fに変な人がいてます」と笑
行ったらホンマに怪しい人がいました
その時山下さんにfacebookやってますかと聞かれて、友達になりました
そしたら共通の知人から「あんたらなんで繋がってんの?」ってメッセージが来た。
1週間後に飲みに行って意気投合!
「おもろいことしたいねん?」がエガプロになった
これでやりたかったことが実現できるようになった
そのときは何をするとかも決めてなくて、おもろいメンバー集めたいねんくらい
1年くらいかけて、山下さんと企んだセミナーの参加者に声掛けをし一本釣りしました
「おもろいことしたいねん、一緒にせえへん?」と笑
結果初期メンバー10人ですね
そこからよくわからない爆走モードへ笑
Poly:
その10人からよくわからない爆走モードへどうやってもっていったんでしょう
また、人を誘う段階でフィルターはかかってると思うのですが、今の規模まで成長することは想像していましたか?
高岡氏:
3〜5年くらい先の状態として想像してたものが1周年イベントで達成した。
思ったようになっていってるが、想像の3倍速くらいで動いてる
3周年イベント(2019年2月)の状態は10年目のイメージでしたね
山田さんが入ったり、色々なところでメンバーが自分たちで勝手に動き始めるという状態
そもそも集まった時に理念も何も決めてないし、面白いことをしたいという熱量だけしか伝えてない
最初はみんなの自己肯定感が低く、「自分なんて」みたいな感じでした
僕は想いと熱量を感じたから、普通でいいねんと
やりたいことや好きなことに対する熱量さえ開放してくれたらそれでいいと言い続けました。
結局想いの熱量がないから続かないんですよ
否定をしないというのは当たり前で、よく「自分たちの思ってることと違うかった」って聞きますが、結局自分の思ってることを伝えてない
「相手も知らんのに違うって知らんがな」と笑
じゃあそれを全部引き出せる環境を作ろうと
暴走モードでコミュニティが広がる理由
Poly:
想像の3倍速が出るために工夫はありましたか?
高岡氏:
工夫は答えから言うと。してない
少し脱線するけど、山下さんとの出会いが衝撃的だったのは、何を話してもゴールは同じで
やり方が真逆だったことなんです。
お互いが真逆過ぎて、否定/肯定ができない
すっげぇしか出ない笑
話を戻すと、僕にない部分をうまいことを補完できたのが秘訣かも
お互い疑うことをしないということ
Poly:
丁度高岡さんの守備範囲と山下さんの守備範囲が重なる部分が少なかったと
高岡氏:
そうですね
シンプルに僕は巻き込み力が彼よりも長けてる
ただ巻き込んだ後放置
山下さんは具現化するのが得意だった。もう天才ですよ
お互いがストレスかからない理由はそこですね
苦手なところを相手が得意としてるから、軽いノリで両方が言えちゃう
エガプロ運営の今後〜コミュニティ運営に大切なもの
Poly:
3周年時点ですでに10年後のイメージということでしたが、ここから先エガプロはどうなるのでしょうか?
高岡氏:
次の展望は、僕と山下さんがコアなところから外れていきたい。
もっとしっかりと熱量がある人を見つけていかないと、エリアを拡大するにあたって、そこを通さないといけないみたいな箇所があると阻害にしかならない。
そのエリアエリアで信頼できるメンバーがネットワークを組むというのが一番重要かなと思っています。
まずは大阪全域に活動を広める。今年はそんな年になるのかなと
10年後に周りに「ほらみてみ」と言いたいです笑
熱量のあるもの同士で、人を信用したりチーム組む。
その意味を理解したメンバーが広まった時に、地域がめっちゃオモロくなってるっしょと
それが当たり前になると、出来ないんじゃなくて、誰かに言ったら出来るかもと考えるようになる。
情報が伝わってないことが一番問題なので、この人に言ったらなんとかなるだろという人たちが地域にいてくれるとそのネットワークで何かの答えが生まれる。
デジタルも大事やけど、アナログも大事
両輪じゃないとアカンと思ってる。
Poly:
そうですよね
デジタルが重要だと言われるからこそ、アナログの価値も見直さないといけない
リアルでの人と人のつながりとかですね
高岡氏:
コミュニティを作るってよくやってると思うんです。
大事なんですけど、今のコミュニティの作り方の大半は地域の小さなエリアで作るじゃないですか。
〜町、〜市みたいな
隣の市の人が入ろうとすると、なぜか疎外感感じる。
全部が島なら距離があっていいですけどね。
コミュニティを広げたいなら、地域じゃなくて想いに共感できたら参加できるべき
あまり「〜べき」は使わないけど、そこはべきを使わせてもらいます。
コミュニティを発展させたい目的はなんなのか?
メインの何かを活性化するのに、能力ある人達を阻害したら意味はない。
自分よりスゲー人たちが山程おるのに
あと、意外と偉いさんほど俺がやってると言っちゃう笑
Poly:
想いに共感する人がコミュニティに入るということで、エガプロというコミュニティを大阪全域、日本全国に広げる上でどのような絵がありますか?
高岡氏:
全国展開するって聞くと、エガプロの支部を作ってまとめるイメージですよね?
Poly:
イメージはそうですね。
高岡氏:
そうではなくて、エガプロの想いに共感する人が、各地域でエガプロのようなことをしてくれればいいと思う
エガプロ式みたいなものが広まればいいなと
笑顔をつなぐプラットホームというのがエガプロの理念なのですが、
プラットホームが大阪にはできてます。
どこかの線をつないでくれたら行けるけど、”線だけ””プラットホーム(駅)だけ”があっても仕方ない
全国につながることによって、どこにでもアクセスできる、どこで何が生まれてもいい。
大阪の唯一の取り柄は「勢い」ですからね。
誰でもできる仕組みがエガプロ式、どこにでも居てる想いの熱量が高い人が輝くから面白い
介護業界をこれから目指す人、すでに業界内にいて踏み出せない人へ
Poly:
ありがとうございます。
インタビューも終盤に近づき、これから介護業界を目指す若い人や30代とかだったり、このような団体を知らない方、チャレンジすることを避けてる人へメッセージなど頂いてもいいですか?
高岡氏:
一番苦手なやつ来た
Poly:
え、苦手なんですか?
高岡氏:
しゃべるの苦手ですからね
お酒が入ると頭の回転良くなるんですけどね笑
好きなことをみつけて突っ走って欲しい
僕らは助言やサポートはします。
とにかく好きなことをしろ!!ということですね
結局やりきらないと将来自分という価値が生まれない
好きなことを1つみつける
難しいことを考えがちですが、誰よりも笑うことが得意とか、何か特技があるとか何でもいい
介護業界って暗いイメージが定着していますが、実はめっちゃ面白いしスゲー人たちがたくさん居てる。
まずは勇気をもって一歩を踏み出して(笑)
Poly:
どうしても他と比べたりしてしまいがちですからね
高岡氏:
ホンマにね
人それぞれやから気にせんでええのにね。
個人的にこの業界って、その人がいるだけで空気が温かくなる笑顔になってしまうという人がいてる。そんな人がすごく気になっています。
これってどこの職場にも絶対一人はいると思うのですが、作ろうと思っても作れないので、そうゆう逸材をたくさん発掘していきたいし、育てていきたい。
昔から笑顔ばかりをキーワードにしていますからね
そんな想いのわかる人たちにこの業界に来て欲しい
Poly:
最後にPolyのテーマにもある
「介護福祉職でなくても身近になる介護にどのように目を向けるか」
ですが、介護業界外の方へ何かメッセージなどはありますか?
高岡氏:
介護って突然やってくるんです。だからできることなら自分の介護が必要になったときのことをイメージして最低限必要な情報だけは学んでおいて欲しい。
また、突然過ぎて何一つ準備ができないと思うので、僕ら専門職と繋がるラインがどこにあるかだけでも知ってもらえるとありがたい
介護って一番関係性の薄いところなので、なってみないとわからないんですよね
ただ介護を受ける側はワガママなままでいて欲しい、じゃないと業界の成長につながらない。
あっメッセージ! なんやろな笑
業界以外へのメッセージがハッキリわかってるともっとみんな介護に熱あるんやろなと
Poly:
ある意味それが課題ということですね
昔は介護職という仕事がなくても地域のコミュニティで回っていた、どんどん施設が必要になったり職が必要になったりというのは家族間や近所のコミュニケーションが希薄になってるからもありますよね
高岡氏:
間違いないよね
ただこのご時世、おそらく各エリアで発信元になってるおもしろ人物がいてるはず
そうゆう人を見つけて欲しいです。
Polyはそれを発信してくれるんでしょ笑
見つけろ!みたいな勢いがいいのかな笑
ただ将来はそんなに不安じゃないということは言いたいですね
まとめ
後編は、高岡氏のチームに対する考え方とエガプロの運営から感じた今後のココミュニティ運営についてお話頂きました。
想いの強さがすべてを好転させるというのが、このインタビューを通じて得た教訓だと思います。
また高岡氏にもコメントをいただきましたが、現在介護に関心がない方も、ぜひ地域で面白い、介護業界の人を見つけていただければいいなと
その際にPolyがお力になれれば編集部としてもとてもうれしいです!
それでは次回のインタビューをまたお楽しみください!